契約社員とは

雇用契約を拒否された場合

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有期契約は期間満了により終了する

期間の定めのある労働契約(有期契約)は期間満了により終了するのが原則です。
したがって労働者には、契約期間終了後も働いて賃金をもらう権利はありません。

一定の期間を定めて雇用した場合には、その期間が満了すれば、定年の到来と同じように労働契約が自動的に終了するので、「解雇」ではなく、「退職」に該当する。
(昭和23.1.16 基発56号)

一定の期間又は一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約を締結していた労働者の労働契約は、他に契約期間満了後、引続き雇用関係が更新されたと認められる事実がない限り、その期間満了とともに終了する。

したがって、業務上負傷し又は疾病にかかり療養のため休業する期間中の者の労働契約も、その期間満了とともに労働契約は終了するものであって、労働基準法第19条第1項の適用はない。
(昭和63.3.14 基発第150号)

反復更新で「期間の定めのない雇用」と同一視される

契約更新は、有期契約の期間が満了した時に契約を改めて結ぶことで、契約更新の約束がない限り更新するかどうかは、その度に双方の合意により決まるのですが、有期契約であっても、反復更新され長期にわたり雇用されている場合が多く見られ、むしろこういう雇用形態が一般化しています。

判例でも、「この更新が反復されるにしたがって暫時その有期的性格を失い」(日立製作所事件 水戸地裁 昭和46.3.2)、「あたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状況」となり「期間満了によって傭止めするに当たっては、解雇に関する法理が類推される」(東芝柳町工場事件 最高裁 昭和49.7.22)、とされています。

●判断基準としては、次の要素が考えられます。
(1) 業務の種類、内容、雇用形態(臨時性・季節性・常用性等)

(2) 契約上の地位(正社員との同一性)

(3) 反復更新の有無、回数

(4) 実際に雇用した期間(勤続年数)

(5) 契約更新手続の有無、厳格性、手続形式

(6) 主観的態様(雇用継続の期待を持たせる言動・認識の有無、程度)

(7) 従事する業務の種類・内容・勤務形態

(8) 同様の地位にある他の労働者の更新状況

(9) 勤続年数や年齢の上限設定の有無

実質的に無期契約となっている場合

実質的に無期契約となったと認められる場合、以下のように会社が主張する雇止めの理由によっては、雇止めが無効となる可能性があるので注意が必要です。

(1) 単に形式的な期間満了の理由だけの場合

(2) 経営不振が理由の場合、整理解雇の4要件(整理解雇の必要性があること、解雇を回避するための努力を尽くしたこと、解雇対象者の選び方が公正・妥当であること、労働者に対して説明や協議を尽くしたこと)を1つでも満たしていない場合

(3) その他にも、労働者側の勤務不良が理由の場合、これまでに警告もなく、勤務不良の内容や程度が客観的に合理的なものでなく、あいまいな基準のままでの場合

なお、パートタイム労働者(通常の労働者より短い時間働く人)については、パートタイム労働法の労働省指針において、1年を超えて引き続き短時間労働者を使用するに至った場合であって、当該労働者を更新しないときは、少なくとも30日前に更新しない旨を予告するよう努めることとしています。

雇止めが解雇とみなされる場合

有期契約の契約更新を会社側が拒否すること(雇止め)に関しては、雇用されていた状況を総合的に判断し、解雇に当たるとみなされる場合もあります。

例えばある程度の期間にわたって反復更新され労働契約が継続しているなど一定の要件の下では、労働者が雇用の継続について期待を抱くような状況であり、実質的に期間の定めのない契約(無期契約)となったとして、解雇に準じた合理的な理由や解雇予告手続きが必要とする判例があり、定着しています。

また、形式上期間の定めがあっても更新していない場合、更新手続がルーズで当事者双方とも長年にわたり期間の定めがないのと同様の運用をしている場合にも、雇止めを解雇とみなす判例が出されています。

雇止めを肯定した判例

ティアール建材・エルゴテック事件 東京地裁 平成13.7.6

短期契約の更新拒否の事案。
原告は昭和62年から臨時工として採用され、職場が別会社に吸収合併された後も、平成9年まで契約更新を続けてきた。

裁判所は、解雇に関する法理が類推適用されるとの判断を下したが、人員整理の必要性、解雇回避の困難さを認め、雇用契約終了を支持した。

筑波大学(外国人教師)事件 東京地裁 平成11.5.25

国立大学から、当初、雇用契約期間1年、招聘期間を2年間として招聘され、その後、契約を更新して合計4年間勤務してきた外国人教師(原告)に対する雇止めを争った事案。

裁判所は、右雇用契約は国家公務員法2条7項に基づく契約期間を1年とした雇用契約であり、その雇用契約で定めた契約期間が1年である限りは、そもそも解雇権の濫用法理を類推することはできないとして、本件契約は最後の契約期間の満了とともに終了したと判断、雇止めは期待権侵害による更新拒絶(及びその権利濫用)とはならない、とした。

丸島アクアシステム事件 大阪地裁 平成9.12.16

6ヶ月の期間の定めのある契約を10回更新し、通算5年勤務してきた嘱託社員に対する、勤務態度不良、勤務状況不良(加工ミスやポカ休が多くなり、注意しても一向に改善されない)ことを理由とする雇止めには理由があり、最終の契約更新にあたり、再更新しない旨を通知して本件雇止めに至っていることや、会社業績不振を理由に、雇止めを有効と判断している。

大阪大学上告事件 最高裁 平成6.7.14

大学図書館の事務補佐員として4年半勤務した日々雇用職員が再任用されなかった事案。

最高裁は、日々雇用であることを明示して代替的事務(カウンター業務)に従事することを予定して任用したことは、国公法の趣旨に照らして違法とはいないとした原審を指示。

任命権者が、日々雇用職員に対して、任用予定期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど、右期間満了後も継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情がある場合には、職員がそのような誤った期待を抱いたことによる損害につき、国家賠償法に基づく賠償を認める余地があり得るとしても、原審の適法に確定した事実関係の下においては、右のような特別な事情があるということはできない。

亜細亜大学事件 東京地裁 昭和63.11.25

更新により21年間雇用された非常勤講師の雇止めが有効だとされた。

非常勤講師は限られた職務を本来短期間担当する地位にあり、大学から全般的な拘束を受けないことを前提としており、・・・非常勤講師につき、期間を定めて雇用するという形態は、その限られた職務内容と責任を反映したもので、その嘱託に当っては大学が裁量に基づき適任者を選任することを予定したものである。

その拘束の度合い等からして、被告との結び付きの程度は専任教員と比べると極めて薄いものであって、原告は、被告との雇用契約がそのような性質のものであることを十分に知り、20回更新されて21年間にわたったものの、それが期間の定めないものに転化したとは認められないし、また、期間の定めのない契約と異ならない状態で存在したとは認められず、期間満了後も雇用関係が継続すると期待することに合理性があるとも認められない。

日立メディコ事件 最高裁 昭和61.12.4

2ヶ月雇用の5回にわたる更新。
これによって、本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、あるいは上告人と被上告人(使用者)との間に期間の定めのない労働契約関係が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできないとされた事案。

独立採算の工場の人員を削減する必要があり、余剰人員を他の事業部門に配置転換する余裕もなかったため、該当工場の労働者に対して希望退職者募集を行わないまま、まず臨時員全員の雇止めを行った。

季節的労務や特定物の制作のような臨時的作業でない作業に従事し、2ヶ月雇用を5回更新した臨時員の雇止めに当たっては、解雇の法理が適用されるべきであるが、終身雇用下のいわゆる本工を解雇する場合とは、おのずから合理的な差異があるとされた。

雇止めを否定した判例

カンタス航空事件 東京高裁 平成13.6.27

期間満了後も継続雇用することを乗務員も会社側も想定していたと指摘したうえで、航空会社は年々利益を伸ばしており、期間満了を理由に解雇するのは信義則上許されないと判断した。

丸子警報機(雇止め・本訴)事件 東京高裁 平成11.3.31

2ヶ月契約を反復更新して、それぞれ18年8ヶ月と15年9ヶ月勤務してきた2名の臨時社員に対する、経営上の必要性を理由とする雇止めは、雇止め回避措置及び事件協議を経ていない点で、明確な信義則違反があるうえ、会社には雇止めを行う経営上の必要性を認めることは困難であるから、権利の濫用に当たり無効である。

北海丸善運輸事件 大阪地裁 平成2.8.23

1年契約(4回更新)で運送業務に従事していた者に対する雇止め。

契約更新が機械的・形式的だったこと、継続雇用の希望に応ずる趣旨をほのめかしていたこと、基幹的・恒常的業務に従事し、業務内容も正社員と変わりなかったことなどから、期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態であったとして、雇止めが無効とされた。

このことから、有期契約がどの時点や状態から実質的に無期契約となったと認められ、雇止めが解雇にあたるとみなすのかは、ケースごとに雇用されていた状況を総合的に実態に応じて判断することになります。

 

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