変更解約告知
変更解約告知とは、従来の労働契約の解消と新たな労働契約の締結の申し込みを同時に行うことで、労働条件変更のための手段として用いられる解約告知をいいます。
変更解約告知の現状
ここ5年間で変更解約告知を行った企業(単一回答)
※質問:ここ5年間における労働条件の変更を受け入れなければ退職を余儀なくされることを説明した上での労働条件変更の有無
(1)あった 3.4%
(2)なかったが、今後はそうしたことも考えられる 4.8%
(3)なかった 86.2%
(4)無回答 5.7%
(労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査 労働政策研究・研修機構 平成16.11)
変更解約告知時の従業員の対応(複数回答)
(1)異議なく変更を受け入れた 55.5%
(2)異議を述べたが変更を受け入れた 11.8%
(3)変更を受け入れず退職した 23.5%
(4)その他 6.9%
(労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査 労働政策研究・研修機構 平成16.11)
変更解約告知の方法について
変更解約告知
変更解約告知の方法としては、以下の二つがあります。
1. 労働契約内容の変更の申し入れとともに、労働者の承諾を解除条件または労働者の拒否を停止条件として解約告知を行うもの
2. 解約告知と同時に、あわせてその告知期間経過後に変更された条件で労働契約を継続する申し込みをするもの
変更解約告知に対しては、労働者は異議を留めて変更後の条件の下で就労しながらも、その条件の変更が社会的に相当かどうかを労働裁判所で争ってくる可能性もあるでしょう。
裁判例には、航空産業のリストラのなかで東京支社の人員を大幅に削減し、残存従業員の雇用形態と労働条件を根本的に変更するために行った変更解約告知を有効としたものがあります(スカンジナビア航空事件 東京地裁 平成7.4.13)。
変更解約告知の範囲について
集団的変更解約告知
変更解約告知を労働条件変更の手段として承認するためには、ドイツのような法的整備が必要であるというのが多くの学説の指摘するところです。
この場合でも、日本には労働条件変更には就業規則の変更というより穏健な手段があるので、就業規則の変更によって対処できる場合には、解約変更告知はできないと考えられます。
また、集団的変更解約告知が人員整理の一環としてなされるようなケースでは、整理解雇の4要件と同様の判断の視点をとる必要があるとされています。
1. 就業規則の変更で対処できる労働条件変更、労働時間、賃金、退職金等
2. 就業規則の変更で対処できない労働条件変更契約上特定されている勤務および勤務場所など
変更解約告知における労働条件変更
従来の労働条件では契約関係を存続させることが不可能であり、解雇することがやむを得ないとされる限度において、労働条件の変更が不可欠であるということでなければならないと考えられます。
賃金に関する変更解約告知
賃金支払いは、労働契約における使用者の中心的な義務です。
ドイツでは賃金に関する変更解約告知は、賃金を変更しなければ職務ポストが失われてしまう危険性があります。
その他の措置によっては、この危険が回避されない場合であって、賃金の変更によってこの危険が取り除かれる公算が大きいことを使用者が証明した場合に限ってみとめられると考えられています。
期間の定めのない契約から有期契約への変更解約告知
手続き的な保障のあるドイツにおいても、判例は期間の定めのない契約から有期契約変更解約告知は許されないものとしています。