有期雇用契約の原則
(1) 契約期間がある有期契約は文字通り期限がきたら終了するのが原則である。
(2) 期間の定めが一応あっても、更新することへの期待ができる事情があるときは、更新されることが原則で、更新拒絶(雇止め)には期間の定めがない契約にならって、解雇が許される場合と同じ条件と手続きが必要である。
有期契約は、真に短期の必要があって契約するのが原則です。
この有期雇用の契約満了については、行政解釈では解雇問題は生じないとしています。
一定に期間または一定に事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約については、他に特段の事情のない限り、契約期間が満了した場合は、使用者の解約の意思表示をまたず自動的に労働契約が終了し、解雇の問題は生じない。
(昭和23.1.16 基発第56号、昭和24.12.6 基収第3908号、昭和63.3.14 基発第150号)
しかし、人員調整を容易にするため、便宜的に有期契約とし、実際にはこれを繰り返していることがあります。
こうした場合、更新の手続きがかなりル-ズに行われることがあるばかりか、ときには更新手続きさえせずに、そのまま雇用し続ける例さえあります。
このような場合は、期間の定めがない契約と同様に、正当な解雇理由と解雇手続が必要となります。
会社都合によって契約途中で解雇する場合や事実上期間の定めのない雇用になっている場合は、いくら30日前に予告したとしても、事業運営が成り立たなくなったなど、やむを得ない理由がなければ、その解雇が無効とされることになります
有期労働契約の締結及び更新・雇止め
厚生労働省では、トラブル防止のために、「有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準」を制定しています。
その主な内容は次のとおりです。
なお、これらについては罰則付きの強行法規ではありません。
(1) 契約締結時の明示事項等
1. 使用者は、有期契約労働者に対して、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示しなければならない。
2. 使用者が有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対して契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない。
3. 使用者は、有期労働契約の締結後に(1)又は(2)について変更する場合には、労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければならない。
これらは、トラブル防止のため、書面により明示することが望ましい。
(更新の有無)
(1) 自動的に更新する
(2) 更新する場合があり得る
(3) 契約の更新はしない 等々
(判断基準の例)
(1)契約期間満了時の業務量により判断する
(2) 労働者の勤務成績、態度により判断する
(3) 労働者の能力により判断する
(4) 従事している業務の進捗状況により判断する 等々
(2) 雇止めの予告
使用者は、契約締結時に、その契約を更新する旨明示していた有期労働契約(締結している労働者を1年を超えて継続して雇用している場合に限る。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも契約期間の満了する日の30日前までに予告しなければならない。
(2) 雇止めの理由の明示
1. 使用者は、労働者が雇止めの理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
2. 雇止め後において、労働者が雇止めの理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
(雇止めの理由の例)
(1) 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
(2)契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため
(3) 担当していた業務が終了・中止したため
(4) 事業縮小のため
(5) 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
(6) 職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため 等々
(4) 契約期間についての配慮
使用者は、契約の更新により一定期間以上(=1年を超えて)継続して雇用している有期契約労働者と契約を更新する場合には、契約の実態及びその労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。
※なお、契約期間の上限は原則3年(一定の場合には上限5年)