セクハラとは

セクハラの判例集4

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東京市立小学校校長セクハラ事件 東京地裁八王子支部 平成8.4.15

概要

被告:校長
原告:被告が学校長をつとめる小学校教諭。

被告は原告とともに他校の見学会及び懇親会に出席し、その帰途、原告の手を取り、自分の性器をさわらせる等のわいせつ行為を要求した。原告はこれを拒否。

この結果、校長は他の教師に対する態度とは著しく異なる冷淡な態度をとり、人事上不利益を課すなど嫌がらせ行為を行った。

慰謝料300万円の内金として200万円を請求。

判決

50万円認容

原告の供述は具体的かつ詳細であり、終始一貫しているのに対し、被告の供述は不自然な感が否めない。

しかし、その後の人事上の処遇等については報復行為とまでは認められない。

平成10.12.21 東京高裁で和解成立(75万円)。

出典・参考:管理職のためのセクハラ講座 あなたの理解で大丈夫ですか?(ぎょうせい 金子雅臣 著)、セクシュアル・ハラスメント法律相談ガイドブック(第二東京弁護士会)

神奈川セクハラ(市役所係長)セクハラ損害賠償事件 横浜地裁 平成16.7.8

概要

市の係長が、課長宅で行われたバーベキューパーティーでの記念写真の撮影に際して、女性職員の手を強引に引いて膝の上に座らせ、「不倫しよう」「色っぽいよ」と発言(写真証拠が残る)。

また、日常の懇親会等のたびに「結婚しろ」「子供を産め」「結婚しなくていいから子供を産め」という言動があったり、他市との研究会懇親会の後に、他市の男性独身職員に対し「うちにいいのがいるから」などと発言した。

また、懇親会の席上で「言葉のセクハラだけで体のセクハラがないのは、自分に魅力がないからか、我々に理性があるからか考えろ。」とも発言した事実が認められた。

原告は苦情窓口にセクハラの件を相談し、職場での男女差別や自らが職場内で蚊帳の外におかれていることなどを含め状況を訴えた。

苦情担当の課長は責任者B課長に内容を報告したが、その後2週間、B課長から連絡はなかった。再度申し立てを行った原告に対し、B課長は、パーティーでの行為は明らかにセクハラだと認めつつも、「A係長とは古い知り合いで嫌がらせをする人間ではない」と否定したり、本人のA係長と離れた職場に配属されたいという主張に対し「定期異動でないと容易ではない」と見当違いの回答をするなどした。

さらに原告が市長あてに内容証明で回答を求めたところ、市側は弁護士を通じていったんは事実否定。原告も弁護士を立てて交渉した結果、A係長から50万円の慰謝料支払いを提案されたが、これに対しては原告が応じず、訴訟に至った。

判決

裁判所は、「いいのがいるから」について裁判所は、被告が「独身者同士を引き合わせることは一般的」と述べているが、このこと自身、同人が「原告の結婚や異性との交際という性的関心に基づいて発言したこと」を伺わせるとし、「体のセクハラがないのは・・・理性があるからだ」との発言についても、性的関心に基づくもので、相手に不快な感情を抱かせ、精神的苦痛を与える環境型セクシャルハラスメントに該当する、と判断した。

A係長の違法行為による精神的損害に対する慰謝料:120万円(+弁護士費用12万円)

B課長の違法行為による精神的損害に対する慰謝料:80万円(+弁護士費用8万円)

の支払いが認められた。

なお、市長に対する義務違反は、国家賠償法の適用を否定した。

出典・参考:労働判例(No.880 2005.1)ほか

横浜セクハラ事件 控訴審 東京高裁 平成.9.11.20、横浜地裁 平成.7.3.24

概要

被告:上司である営業所長(親会社からの出向者) 会社
原告:営業所に勤めていた女性

被告は、原告に対し、肩をたたいたり、髪の毛をなでるなどの行為を行った。

また、事務所で原告を抱きしめ、「一度抱きしめたかった」などと言いながら、無理矢理キスしたり、身体を密着し、指を股間に入れる等、約20分間にわたって執拗にこれらの行為を続けた。

被害者が会社を訴えてからは、仕事をさせないなど嫌がらせを行い、退職に追い込んだ。

原告は、慰謝料500万円と弁護士費用を請求。

判決

●横浜地裁

原告敗訴

被害者が、抵抗して逃げなかったことが、その理由となった。

事務所内での抱きつき行為について、20分もの長時間、上司のなすがままにされていたこと自体が、考えがたく、そのような被害にあえば冷静な思考、対応をとるのは、不可能であると考えられるのに、原告女性の思考、対応は冷静だったことなどから、女性の供述には信用がおけないなどとされた。

●東京高裁

原告逆転勝訴

275万円容認(慰謝料 250万円、弁護士費用 25万円)

原告の供述内容は具体的であり、目撃者等がないことでその信用性が失われるものではない。

また、職場における性的自由の侵害行為には、職場での上下関係や同僚との友好関係を保つための抑圧が働き、身体的抵抗をとらない要因となりうることが認められ、原告の供述内容が不自然であると断定することはできない。

なお、加害者と出向先の使用者責任は認められたが、出向元企業については責任を負わないとされた。

控訴審判決は、被害女性の供述の信用性につき、アメリカにおける強姦被害者の対処行動についての研究などに基づき、女性の供述に信用性を認めた上で、上司及び会社(使用者責任)に対して275万円(うち25万円は弁護士費用)の支払いを命じた。

なお、会社の労働環境整備についての義務違反を理由とする会社そのものの不法行為責任については、会社がセクハラの事実について確実な証拠を有していなかったことから、これを否定した。

出典・参考:管理職のためのセクハラ講座 あなたの理解で大丈夫ですか?(ぎょうせい 金子雅臣 著)、セクシュアル・ハラスメント法律相談ガイドブック(第二東京弁護士会)、「職場のいじめ」(東京都労働経済局 平成.13.3)、職場のトラブル解決の手引き-個別労働関係紛争判例集-(日本労働研究機構編)

K短期大学(名誉毀損)事件 東京高裁 平成.11.6.8、横浜地裁川崎支部 平成.10.3.20

概要

原告:短大教授(男性)
被告:短大専任講師(女性)

女性講師は、県教育長あての書簡中に、「教授は懇親会の席上で女子職員の乳房をつかんだ。自分に対しても『キスさせろ』と強要した」等の事実無根の記載をし、教授の名誉を毀損した。

また、講師は教授会において、「教授がキスを強要した」との発言を繰り返し、名誉を毀損した。

慰謝料として100万円を請求

控訴審

原告側控訴 同額の慰謝料を請求

判決

●横浜地裁川崎支部

原告側敗訴(名誉毀損の事実なし)

真に教授にセクハラの事実があったかはともかく、それを疑わせる行為はあったと推認できる。

講師が教育長あての個人的書簡の中でセクハラの事実を記載し、これにより教育庁がある程度疑いを持って、講師に事実確認したとしても、この書簡が教授の名誉を毀損すると認めるに足りない。

また、教授会で講師が、教授の主張するような発言をした事実は認められない。

●東京高裁

原告側勝訴 慰謝料 60万円(書簡 50万円、発言 10万円)

書簡は、単なる私信ではなく、教育長としての対処を求める内容であり、公然性がある。また、講師が教授会において「教授がキスを強要した」旨の発言をした事実が認められる。

指摘されるような、教授のセクハラ行為については、真実であるという証拠はない。よって、講師はその書簡および発言により、教授の社会的信用を低下させ、その名誉を毀損している。

出典・参考:セクシュアル・ハラスメント法律相談ガイドブック(第二東京弁護士会)

千葉(不動産会社)事件  千葉地裁 平成10.3.26

概要

被告:社長 会社
原告:事務員

代表取締役である被告は、事務員として雇用されていた原告に対し、パソコンを操作して男女の裸の姿を見せたり、抱きついて胸や腰を触る、キスを求める、などの性的言動を繰り返し、モーテルに連れて行って性交渉を強要にまで及んだ。

被告は原告への謝罪の要求を拒否し、原告は退職に至った。

慰謝料として300万円を請求

判決

原告側全面勝訴、300万円認容。

原告の退職は、被告の原告に対する性的言動の繰り返し、及び原告の性的自由の侵害によりなされたものである、被告代表取締役及び被告会社は、不法行為に基づく損害賠償責任を負う。

出典・参考:管理職のためのセクハラ講座 あなたの理解で大丈夫ですか?(ぎょうせい 金子雅臣 著)、セクシュアル・ハラスメント法律相談ガイドブック(第二東京弁護士会)

千葉(設計会社)セクハラ事件 千葉地裁 平成11.1.18

概要

原告の入社直後から、原告に対し、自らの性体験を語る、夫婦間の性的関係の有無を問いただす、「おばさん」「子持ちのババア」といった言辞を行う、キーボード操作を教える際に必要以上に身体を密着させる、抱きつく、髪をなでるという行為や、卑猥な写真を原告のコンピューターの前に置くといった行為を行った。原告はその都度不快感を示したり、抗議したりしたが改められないため、社長に苦情を訴え、社長立会いの下で、被告に今後セクハラ行為を行わない旨の誓約書を求め、被告も一旦は事実関係を認めた。その後原告は他の階で作業を行うようになったが、同月末に退職した。

判決

原告は、被告が行ったセクハラ的言動により精神的苦痛を受けたことが認められ、その内容、被告と原告の会社における地位、年齢、その後原告及び被告双方が会社を退社していること等本件に現れた一切の事情を考慮して、原告の精神的苦痛に対する慰謝料を80万円と認めるのが相当である。

出典・参考:労働判例768号

松戸市議会議員事件 千葉地裁松戸支部 平成.12.8.10

概要

原告・被告とも市議会議員

被告市議は、市議会棟内で原告市議に対し、後ろから「おはようございます」と声をかけ、「男いらずの○○さん」と呼びかけた 。

相手側市議は、「失礼だから取消しなさい」と撤回を求めたが、「ユーモアだから取り消さない」と拒絶した。

このほか、被告発行の活動報告書にも原告の氏名の上に「オトコいらず」とふりがなをつけて、原告の個人の尊厳・名誉・人格権及び議員としての就業環境を侵害した。

民法709条の不法行為に基づく損害賠償義務があるとして、慰謝料290万円を請求。

被告は「男いらず」の表現については、「男性に頼らない自立した女性としての賛辞として言った。」と主張。

原告は「男いらずは、男性と性的な交渉を持つことができない、性的魅力のない女性として侮辱として使われる言葉だ」として反論した。

被告側反訴

原告は原告発行の個人情報誌に単なるユーモアである上記言動を独断的にセクシャルハラスメントと決めつけ、不必要な風評を流し、被告を誹謗中傷し、被告の名誉を傷つけた。

慰謝料30万円を請求。

判決

裁判所はセクハラを認めた。原告勝訴 慰謝料40万円を認容。 被告側反訴は棄却。

「男いらず」は自立した女性に対する賛辞だという原告の主張に対し、「自立した女性というのは、男性と協力し合い支え合って生きているのであり、男性を必要としないということはありえない。」とし、原告が即座に取消しなさいということは、原告にとっては賛辞ではなく、不愉快であることだというものを示している、と判断した。

アメリカ雇用機会均等委員会(EEOC)のガイドラインに照らし、被告の発言は原告の意に反する性的な言動であり、これにより原告の就業環境が害され、原告が市議会議員としての職務を遂行する上で看過できない程度の支障を生じさせたものであるから、環境型セクシャルハラスメントに該当し、原告の人格権・名誉を侵害した不法行為として金10万円の慰謝料が相当である。

また、活動報告書への掲載行為は単発の発言と比べ侵害が持続する点で違法性が高く、金30万円の慰謝料が相当である。

原告が個人情報誌に被告の言動がセクシャルハラスメントであると記載したことは、真実の事実を前提とする正当な意見・論評であり、名誉毀損の不法行為は成立しない。

出典・参考:セクシュアル・ハラスメント法律相談ガイドブック(第二東京弁護士会)ほか

長野電鉄事件 東京高裁 昭和41.7.30

概要

バス運転手と女子車掌との不倫を理由とする解雇

判決

解雇有効。

現に当該女子車掌の退職、女子従業員の不安動揺、求人についての悪影響等を将来したほか、バス事業を経営する控訴会社の企業者としての社会的地位、名誉、信用等を傷つけるとともに多かれ少なかれその業務の正常な運営を阻害し、もって控訴会社に損害を与えたものと認められる。

元来運転士および女子車掌間の風紀維持はバス事業運営のため経営者として最も留意すべき重要事項であるから、・・・事業体の名誉信用を維持し、その正常なる業務の運営を計るうえに到底これを放置しえないものとして協約所定の該当条項を適用し被控訴人を企業の埒外に排除したのは、その立場上まことにやむをえない措置であったといわざるをえない。

出典・参考:トラブル防止の労働法(中央経済社 河野順一 編著)

静岡Fホテルセクハラ事件 静岡地裁沼津支部 平成2.12.20

概要

原告はホテルのフロントで会計係として働いていた女性で、被告はその上司の会計課長である。

被告は仕事の後、原告を食事に誘い、その帰途の車中で「モーテルに行こうよ。裸を見せてよ」と執拗に誘い、原告に拒否されたにもかかわらず、一方的に原告の腰などに触れ、キスを強要するなどした。

その結果、原告は体調を崩し、退職を余儀なくされた。

請求額 599万円(慰謝料 500万円、弁護士費用99万円)

判決

110万円認容(慰謝料 100万円、弁護士費用 10万円)

(被告欠席裁判)

被告の行為は、その性質、態様、手段、方法などからいって不法行為にあたるのは明らかである。

被告が職場上司の地位を利用して機会をつくったこと、一連の行動は、女性の単なる快楽、遊びの対象としか考えず、人格を持った人間として見て見ないことの現れであろうことが、うかがわれる。

出典・参考:管理職のためのセクハラ講座 あなたの理解で大丈夫ですか?(ぎょうせい 金子雅臣 著)、セクシュアル・ハラスメント法律相談ガイドブック(第二東京弁護士会)

双葉鉄道工事セクハラ解雇事件 静岡地裁 平成11.2.26

概要

上司からセクハラを受けた上、不当に解雇されたとの訴え。

判決

被告B、及び被告Cの行為は、職場での上下関係を利用して、異性の部下である原告の意思を無視して性的嫌がらせ行為を繰り返し、原告の職場環境を悪化させたものであり、原告の人格権を侵害するものであるから、原告の被った損害を賠償する責任があるというべきである。

被告会社は、被告B及び同Aの使用者であり、同被告らの不法行為は同被告らの職務と密接な関連性があり、被告会社の事業の執行につき行われたものと認めるのが相当であるから、使用者として不法行為責任を負う。

会社と上司に慰謝料として200万円の損害賠償のほか、会社には未払いの賞与約60万円の支払が命じられた。

出典・参考:職員からの相談実務のてびき(日本人事行政研究所 職員相談研究会監修)

金沢セクシャルハラスメント(建設会社)事件 上告審 最高裁 平成11.7.16、

控訴審 名古屋高裁 平成8.10.30、金沢地裁輪島支部 平成.6.5.26

概要

原告は家政婦として勤務。社長(土木会社経営)が「ちょっと背中を流してくれ」「5,000円あげるからやらせてよ」といったり、スラックスを下着もろとも引きずり下ろし 性交渉しようとしたこともあった。

原告が性的関係を拒否すると、社長は嫌がらせ行為(反抗的な態度に対し平手で殴ったり、ボーナスを無支給とした)を繰り返した。原告はこれに抗議する意味で、「みだらな行為を仕掛けた」と言いふらしたため、社長は原告を解雇した。

これに対し、慰謝料500万円と弁護士費用を請求。

判決

金沢地裁は、社長及び会社に対し、慰謝料80万円の支払いを命じた。ただし、原告の仕事ぶりなどから解雇は有効とした。

控訴審の名古屋高裁は、第一審より多い慰謝料120万円、及び弁護士代18万円の支払いを命じた。

ただし、ボーナスの不支給及び解雇は、勤務成績・態度等から仕方がないこととして、この違法性を否定した。

企業側はこれを不服として上告したが、最高裁はこれを棄却し、原告勝訴。

出典・参考:セクシュアル・ハラスメント法律相談ガイドブック(第二東京弁護士会)、職場のトラブル解決の手引き-個別労働関係紛争判例集-(日本労働研究機構編)

東北大助教授性的強要事件 仙台高裁 平成12.7.7 仙台地裁 平成11.5.24

概要

院生の病気等につけこみ、指導教官だった助教授が性的関係と恋人との別離を強要。研究室内で抱きつかれたり、優位な地位を利用してホテルに連れ出され、性的関係を強要されたとの訴え。

一定期間性的関係が継続したが、院生が強く関係を拒否すると、締切り直前の論文の書き直しを命じる。

学内調査の際に偽造証拠を提出し、事実ねつ造を画策した。

判決

被告の不法行為は、長期に及び多様である上、教育に携わる者としてあるまじき振る舞いであり、特に原告が不安神経症に苦しんでいることに乗じて、妻子ある身でありながら、自己の身勝手な欲望を満足しようと図り、原告に性的接触を受忍させ、ついには肉体関係まで結ばせたことは、悪質という外なく、このような被告の行為によって原告が将来にわたって拭い難い精神的苦痛を受けたことは、原告本人尋問の結果からも明らかである。また、関係を拒絶されるや、論文の書き直しを命じて報復した上、研究科の調査に対しても、当初偽造の診断書を提出したり、他大学の教官に偽証まで依頼して自己の責任を免れようと図るなど、事後の態度も卑劣かつ狡猾と言わざるを得ない。

仙台地裁

慰謝料750万円が認容。

仙台高裁

慰謝料750万円に、弁護士費用150万円をプラス。確定。

出典・参考:職員からの相談実務のてびき(日本人事行政研究所 職員相談研究会監修)、働く女性と労働法(東京都産業労働局 2004)

 

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