それでも絶対許せぬパワハラ
世の中には、様々なハラスメントの言葉が飛び交っている。アカデミック・ハラスメント、セカンド・ハラスメント、リストラ・ハラスメント、ジェンダー・ハラスメント、モラル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、セクシャル・ハラスメント・・・・みなそれぞれ、定義のようなものはそれなりに存在しますが、労働者にとっては関係ありません。
多くは、「いじめ・嫌がらせ」に端的に集約されるものです。その中でも、職務上の地位や権限、つまり、パワーを背景にしたいじめ・嫌がらせはパワハラとして、性的な言動や環境で人格・尊厳を害させるいじめ・嫌がらせはセクハラとしてクローズアップされます。
セクハラ・パワハラは、かなりメジャーになってきて、今や誰もが知るところです。
しかし、セクハラとパワハラでは相当な温度差がある。労働問題に日々接していても感じるところです。双方ともこんなにメジャーなのにまだまだ扱い方に差がある現実。
セクハラは、男女雇用機会均等法11条や同条に基づく厚生労働省の指針で、性的問題への措置を講ずることを会社に課しており、法的な効力に直接結びつくものではないが指針ではかなり具体的に整理されています。例の対価型・環境型も指針に明記されています。
一方、パワハラは、2012年1月30日付で、国がパワハラを類型化し、パワハラの定義づけをしたことを報告し、6つの基本類型をまとめた(いままで日本では、各種団体の定義や講学上の概念は存在していましたが、国として明確には方向付けされていなかったのです)だけです。しかもこれは、国の円卓会議での提言にすぎません。
セクハラは性的問題の措置をすることが均等法の条文にありますが、パワハラはどこにも何もありません。先日の個別労使紛争の施行状況の発表(厚生労働省)で、いじめ・嫌がらせの相談件数が、トップになったという状況にあるのにもかかわらず何もないのです。まず、公的な背景でこうも違う扱いをされている現実があります。
パワハラ紛争として労働者が争った場合
セクハラは、本人の供述や臨場感ある主張(迫真性)、第三者の目撃証言などで、裁判所はセクハラがあったことを肯定する場合が多くなっています。
先に触れた均等法の条文や厚生労働省の指針もバックアップになっていることもあります。
しかし、パワハラは、単なるいじめ・嫌がらせのレベルだと、一向に認めません。暴力のあるパワハラや「死ね!」などの暴言がある場合は別ですが、多くはなかなか険しい道のりです。こうした背景が、企業側にまたいじめ・嫌がらせを平然と行わせる温床になっている。
しかも、セクハラとパワハラで労働者にとって何が最も理不尽なのか。精神的損害賠償、つまり慰謝料の金額です。セクハラは、200万円や300万円ということもありますが、パワハラの損害賠償は、100万円行く場合はめったになく、数十万円、低い場合は数万円というものもあります。