目次
- 1 東京A社事件 東京地裁 平成12.8.29
- 2 S製靴事件 東京地裁 平成.6.4.11
- 3 I銀行事件 東京地裁 平成.11.10.27
- 4 東京全盲会長セクハラ事件 東京地裁 平成.3.1.30
- 5 全国解体工事業団体連合会事件 東京地裁 平成15.9.30
- 6 F製薬会社事件 東京地裁 平成.12.8.29 控訴後和解
- 7 日本航空事件 東京地裁 平成15.8.26
- 8 ケンコーマヨネーズ事件 東京地裁 平成15.6.16
- 9 オフィス美輪事件 東京地裁 平成15.7.22
- 10 バイオテック事件 東京地裁 平成11.4.2
- 11 マンション管理会社セクハラ事件 東京地裁 平成12.3.10
- 12 障害者セクハラ事件 東京地裁 平成.7.5.16
東京A社事件 東京地裁 平成12.8.29
概要
課長職である原告が、部下の女性や派遣社員に対してデートや食事などに誘ったり、性的言動を行ったなどを理由に解雇されたが、事実誤認があり、その性質、様態も違法なものとはいえず解雇は無効だとして、会社を訴えた。
判決
冗談と見られるものが含まれていたとしても、部下を困惑させ、その就業環境を著しく害するものであったとし、被害者の多さ、会社のセクハラに対する取り組みと原告の地位、会社の調査に真摯な反省態度を取らず、かえって告発者探し的な行動を取ったことなどを考慮し、解雇は有効とした。
出典・参考:働く女性と労働法(東京都産業労働局 2004)
S製靴事件 東京地裁 平成.6.4.11
概要
経理担当の女性社員が、2度の強姦未遂、強制わいせつ行為や乳ガン手術に対する侮辱的発言を理由に、550万円(慰謝料 500万円、弁護士費用 50万円)を請求。
判決
事実否定により、原告側全面敗訴。
行為があったとされる日に、原告が出勤したという記録がなく、被告側が別の場所にいたことが推測される証拠がある。事実関係を認めるに足る証拠がない。
被告は原告の名誉を毀損しており、慰謝料30万円を支払うべきだとした。
出典・参考:セクシュアル・ハラスメント法律相談ガイドブック(第二東京弁護士会)
I銀行事件 東京地裁 平成.11.10.27
概要
被告:外資系銀行及び東京支店長
原告:従業員2名(A、B)
支店長は日本語を教えてほしいとの口実で従業員Aを自宅に誘い、断り切れずに訪問したAを強姦した。
支店長は、従業員Bを支店長室に呼び出した上、Bの頬にキスをし、スカートをめくり上げて腹部をなで回し、ブラジャーの中に手を入れて乳房をつかむ等のわいせつ行為をした。
原告らは、支店長に対し不法行為責任、銀行に対し債務不履行責任又は使用者責任に基づく損害賠償を請求。
Aの請求額:600万円(慰謝料500万円、弁護士費用100万円)
Bの請求額:248万円(慰謝料200万円、弁護士費用48万円)
判決
支店長の各不法行為を認定。
銀行側の使用者責任を認定。
Aの認容額 330万円(慰謝料300万円、弁護士費用30万円)
Bの認容額 77万円(慰謝料70万円、弁護士費用7万円)
支店長のAに対する強姦行為は、勤務時間外に支店長の自宅において行われたものであるが、日本における代表者という支店長の地位に照らせば、被告が従業員に日本語を教えるよう求める行為は、銀行事業の執行行為と密接な関連を有する行為と認められる。
支店長のBに対するわいせつ行為は、勤務時間中に支店長室において行われたもので、銀行事業の執行行為と密接な関連有する。
出典・参考:セクシュアル・ハラスメント法律相談ガイドブック(第二東京弁護士会)
東京全盲会長セクハラ事件 東京地裁 平成.3.1.30
概要
原告は、会社受付業務及び全盲の会長である被告の介添え業務を行うために雇用されたが、介添えとして出張に同行するように命じられ、出張先のホテルの部屋で社長から性的暴行を受けた。社長は口止めのため、原告を脅迫。このため退職を余儀なくされた。うつ状態になり婚約も破棄。
判決
社長が不出頭。答弁書その他の準備書面を提出しなかったことから、請求原因事実を自白したものとみなすとして、被告に損害賠償として300万円が認容。
出典・参考:「職場」
全国解体工事業団体連合会事件 東京地裁 平成15.9.30
概要
女性事務職員に対する事務局次長の強姦等。
判決
不当行為に当たるので、連合会は事務局次長と連帯して賠償する義務があるとし、賠償額862万円が示された。
出典・参考:「職場」
F製薬会社事件 東京地裁 平成.12.8.29 控訴後和解
概要
被告:製薬会社
原告:元管理職の男性 (部下30人)
会社は、原告に退職を勧奨し、退職金の支払を伴う普通解雇処分を行った。
この理由は
(1)原告が、職場の複数の女性社員に対し電子メール(「今すぐにでも抱きつきたい」という内容)などで食事やデートに誘ったこと
(2)原告が仕事上の理由以外で個人面談をしたりして交際を求めたこと
(3)出張を命じた女性に自分も同行して同じ宿に泊まろうと申し出たりしたこと
(4)男性社員にも「単身赴任で大変だから、夜だけ相手をしてくれる女を世話してくれれば、管理職にしてやる」などと繰り返したこと
これを不服として、提訴。
判決
原告 敗訴
原告の行為を事実と認めた上、被害者が多い点や、被告が会社から調査を受けた際に、真剣に反省の態度を示さず、かえって告発者捜し的な行動をとったことなどから、原告の行為は就業環境を著しく害しているので、会社が通常解雇を選択したことには合理性が認められる。
面接における「僕は6年越しでアプローチしているのに君は全然相手にしてくれないね」との発言、仕事の進行状況を確認する様子で近づき「ところでお茶でも飲みに行きませんか」との誘い、書類の決裁印をもらいに原告席に行った際に「ごくろうさま。食事に行く約束を待っててね。二人でデートしようね」との発言、「自分といっしょに出張するように」「二人で宿をとろうよ」との発言は、いずれにしても、上司として部下に接する機会に、あるいは上司としての地位を利用して行ったと評価できる、とされた。
出典・参考:セクシュアル・ハラスメント法律相談ガイドブック(第二東京弁護士会)、トラブル防止の労働法(中央経済社 河野順一 編著)、パワーハラスメントなんでも相談(日本評論社 金子雅臣 著)
日本航空事件 東京地裁 平成15.8.26
概要
派遣社員である原告が、上司から性的嫌がらせや性的暴力を受けた。
判決
被告Aは、原告が本件事業に従事していられるかどうかの決定権限を有する上司であったところ、この地位に乗じて、若い独身女性である原告に対し、性的嫌がらせと受け取れる発言をして原告に不快感を与え、更に性的嫌がらせ行為をしたものである。被告Aの一連の行為は、原告の人格権を侵害するものであって、不法行為を構成するものである。
また、被告Aの行為は、上司たる職務上の地位を利用して行われたものと認められるから、被告会社は使用者として、被告Aの不法行為について使用者責任を負うべきである。
被告社員及び被告会社に対し、連帯して77万円の賠償が命じられた。
出典・参考:労政時報(2003.11.7)
ケンコーマヨネーズ事件 東京地裁 平成15.6.16
概要
懇親会後、帰宅途中のタクシー内で同乗した上司からセクハラを受けた。
判決
上司と会社に対する損害賠償として計241万円が認められた。
出典・参考:労政時報(2003.9.26)
オフィス美輪事件 東京地裁 平成15.7.22
概要
取締役が強姦におよんだ。
判決
取締役については、333万円の賠償を認めた。
会社と原告との間には労働契約が締結されていなかったため、安全配慮義務を根拠とする賠償については、認められなかった。
出典・参考:労政時報(2003.10.10)
バイオテック事件 東京地裁 平成11.4.2
概要
被告会社では、温泉その他で頻繁に泊まりがけの研修を行い、その際社長と女性従業員が多数で混浴することがあったが、それは研修会の度に社長から強制されたという訴え。
また、会社の顧客から受けた暴行に対し、会社が転勤などによる安全確保に配慮しなかったため退職を余儀なくされた、という慰謝料請求。
判決
社長との混浴は女性従業員多数と原告でなされ、原告が混浴に応じたことは、1、2回程度であったこと、混浴は強制ではなく勧誘程度であったことから、原告女性の主張は認められなかった。
顧客の暴行(電車中での脅迫行為)については、会社は予見し得る状況にあったとは認めがたいとされた。
出典・参考:職場のトラブル解決の手引き-個別労働関係紛争判例集-(日本労働研究機構編)
マンション管理会社セクハラ事件 東京地裁 平成12.3.10
概要
マンション管理会社の社長からセクハラ、暴行を受け、性的な嫌がらせなどでPTSDと診断され、治療継続中。
判決
被告Aによる、原告の入社以来の性的嫌がらせは、長期間にわたり執拗に行われたものであること、強姦未遂は被告会社事務所内で行われたもので、原告に不法行為を誘引するような落ち度といえるものがないこと、原告はこの不法行為により、心的外傷後ストレス障害となり、不法行為後3年を経過した時点でもなお治療を継続中であると認められ、原告の被った精神的被害は大きいと認定され、慰謝料等約300万円の支払いが命じられた。
(控訴審で和解)
出典・参考:女性情報、働く女性と労働法(東京都産業労働局 2004)
障害者セクハラ事件 東京地裁 平成.7.5.16
概要
身体障害者である原告が、治療及び集中訓練を行うため被告病院に入院した。レントゲン室で被告のレントゲン技師からわいせつな行為をされた。
判決
病院と技師が連帯して、慰謝料300万円支払。
出典・参考:判例タイムス876号