残業命令とは
残業は就業規則等に「残業をする」旨の定めがあれば,使用者の残業命令は根拠があるものとなり,36協定の範囲内で残業命令を行っても違法とはなりません(日立製作所武蔵工場事件・最一小判平成3年11月28日)。
労働者は命令に従わない場合,業務命令違反として処分(懲戒解雇など)を受ける可能性もあります。
しかし,やむを得ない事由があれば残業を拒否することもできるという判決もあります。
例えば,眼精疲労(その旨の診断書提出)を理由に残業を拒否したため普通解雇された労働者が,解雇無効を訴えた事件で,裁判所は,残業命令に従えないやむを得ない事情があったと認められるとして,解雇を無効としています(トーコロ事件・東京高判平成9年11月17日)。
残業等,労働時間を延長
労使関係の自治に委ねられた事項で具体的には,就業規則や労働協約等の規定によることになります。
また,就業規則や労働協約等の規定があったとしても,労働者の健康など利益を著しく損なう場合は,労働者保護の観点から拒否できる余地があります。
いずれにせよ,労使でよく話し合い,労使の利害の調整を図ることが問題解決の早道ではないでしょうか。
労働時間・休日
労働者の労働時間は,原則として1日8時間,週40時間です(労働基準法第32条)。
休日は,労働基準法第35条第1項で毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとしているもので,日曜日とは限りません。週休2日制は義務付けられていません。
労働時間の特例
商業,映画・演劇業(映画製作の事業を除く),保健衛生業及び接客娯楽業で,従業員が1人~9人の事業場については,1週44時間とされています(労働基準法第40条)。
残業・休日労働
残業とは,前述の法定労働時間を超えた労働のことで,労働基準法は原則としてそれを認めていません。
休日労働とは,前述の法定休日にする労働のことで原則認められません。
しかし,業務の繁忙など,この原則を超えて労働させることが必要である場合も考えられるため,労働基準法は,一定の要件の下に残業や休日労働させることを認めています。
その要件とは,就業規則等に残業に関する規定を定めることと,労使協定を締結し,労働基準監督署に届け出ることです。
36協定
残業及び休日労働に関する規定について結ぶ労使協定は,労働基準法第36条に基づく協定であることから「36協定」と呼ばれています。
この協定の締結当事者は,使用者と,
1、事業場で使用される労働者の過半数で組織する労働組合,
2、1、がない場合においては労働者の過半数を代表する者です。
協定の内容として,
1、残業をする必要がある具体的事由,
2、業務の種類,
3、延長することができる時間,または労働することができる休日
4、労働者の数
5、有効期間について定めなければなりません。
尚、5、の延長する時間は,厚生労働大臣の定めた残業等の延長の限度基準に適合したものとなるようにしなければなりません(労働基準法第36条第2項,第3項)。