就業規則に懲戒処分規定を設けておくこと
懲戒処分は、企業秩序の違反者に対して使用者が労働契約上行いうる通常の手段(普通解雇、配置転換、損害賠償請求、一時金・昇給・昇格の低査定など)とは別個の特別の制裁罰であり、契約関係における特別の根拠を必要とすると考えられています。
すなわち、使用者は懲戒処分という特別の制裁罰を課したければ、その事由と手段とを就業規則に定め、労働契約の内容とすることが必要です。
ちなみに労基法が、使用者に対して制裁の制度を設ける場合には、就業規則に明記すべきことを要求している(労働基準法89条1項9号)のも、以上の趣旨によるものと考えられます。
裁判所も、従業員の行為が就業規則の懲戒事由に該当するものであり、しかもその処分の内容も就業規則に則っていることを要求しています。
北辰精密工業事件 東京地裁 昭和26.7.18 ほか
(例外的に)明らかに企業秩序をみだし、企業目的遂行に害を及ぼす労働者の行為に対しては、使用者はたとえ準拠すべき明示の規範のない場合でも、懲戒処分ができる。
理研精機事件 新潟地裁長岡支部 昭和54.10.30
本件各休職処分は、原告に対し、就業規則に定めない種類・内容の懲戒処分を課したことになり、従って、右各処分は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも無効であるといわざるをえない。
就業規則が周知されているか
就業規則がある場合には、就業規則を従業員に周知する必要があります。
従業員に周知(労働基準法106条)されない就業規則は、単なる会社の内部文書であって、就業規則としての効力はありません。
単なる会社の内部文書を根拠に懲戒処分を行うことはできません。
就業規則を従業員に周知していた場合は、就業規則の内容および懲戒処分の有効要件を充足しているかどうかがポイントになります。
事情にもよりますが、懲戒解雇や普通解雇は、そう簡単に認められません。