懲戒とは

IT関連の個別事案ごとの対応

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勤務時間中、業務外のWebサイトでコンピュータウイルスに感染

この場合、当該従業員に対する懲罰の度合いは、会社が日頃から私用でのインターネットの利用に対して厳しい制限を付けていたかどうかがポイントとなります。

勤務時間中の私用での利用に対し、前もって警告していたならば、その結果として、大きな被害が生じた場合、企業はその従業員を懲戒処分とするだけではなく、損害賠償を請求することも可能となってきます。

しかしながら、前もって「禁止措置」等を宣言していなかったとするならば、処分の是非について疑義が生じることになります。

このため、会社側としては、問題が発生する以前に、しっかりしたルールづくりをしておかなければなりません。

場合によっては、損害は取引先にも及ぶ可能性があり、当事者の責任を追及するだけでは済まなくなる可能性が大です。

早急な対策が求められます。

インターネットで会社や個人の悪口を流した

この場合は、名誉毀損罪(刑法230条)または侮辱罪(刑法231条)が成立します。

それが公益に関するものでなければ、名誉毀損罪(刑法230条の2)も成立します。

民法709条による損害賠償の可能性もあります。

就業中会社内で行ったとすれば、就業規則上の服務規律違反や労働契約上の忠実義務違反として、会社はその社員に対し懲戒処分を課すことができると思われます。

しかし、たとえば、休日に自宅から自分のパソコンで同僚の個人的な悪口を、会社の人間であることを秘してどこかのホームページに書き込んだ場合、会社がその社員に懲戒処分を課すことは難しいと思います。

個人として同僚の悪口を書き込んだだけでは、会社の名誉や信用を毀損したとは言えず、企業秩序を乱したこととはなり得ないと思われるためです。

グレイワールドワイド事件 東京地裁 平成15.9.22

勤続22年の従業員が、

職務命令違反、
就業時間中の私用メール、
私用メールにおける上司の誹謗中傷、
人事情報の漏洩、
海外の親会社への文書送付(本人名義)、
海外の親会社への文書送付(組合名義)
を理由に解雇された。

裁判所は、2・6のみ認めたが、これでは背信性は低いとして解雇権濫用だと判断した。

上司に対する批判を送信したことに対しては、誠実義務からして不適切だとされたが、就業時間中にメールをやり取りすることは、就業規則等に特段の定めがない限り、職務遂行の支障とならず、使用者に過度の経済的負担をかけない(当該事件では1日2通程度だった)など、社会通念上相当と認められる限度でなら、職務専念義務に違反するものではない、とされた。

会社のパソコンを使って私用メールやゲームをする

労働義務を負う勤務時間中は、労働者は会社の指示に従い、誠実に業務を遂行することに専念しなければなりません。

したがって、勤務時間中に命じられた業務と関係のない私用メールを送信したり、ゲームをしたりして遊んではならないのは当然のことです。

このような社員に対しては、会社は業務に専念するように厳重に注意し、それでも改まらない場合は、就業規則に基づいて譴責処分等の懲戒措置を講じることになります。

休憩時間中においても、労働者は会社の秩序を維持する義務や、施設管理権からの制約は免れるものではありません。

社用のパソコンには会社の施設管理権が及んでいますから、たとえ休憩時間中であっても、会社がパソコンの私用を認めない場合には、従業員がパソコンを業務以外の用途にみだりに使用してはならないといえます。

社用のパソコン内の電子メールの送受信履歴をチェックする際には、個々の社員のプライバシーとの関連が出ます。

ただし、会社内で社用のパソコンを使用するときには、職務専念義務・施設管理権の観点からすれば、パソコン内の情報は「私的」なものとはいえず、プライバシー権は保護される度合いが相当に低減します。

判例では、私用メールの監視を肯定するものもあります。

現実にはこうした私的利用を許容範囲として黙認している会社も多いと思われますが、具体的紛争が起きた場合を想定すると、あらかじめ社用のパソコンの利用ルールを作っておくことが必要だといえるでしょう。

K工業技術専門学校(私用メール)事件 福岡地裁 平成16.12.17

専門学校の教師が、勤務先のパソコンを使用してインターネット上のいわゆる「出会い系サイト」に投稿してメールを送受信したことを理由として懲戒解雇されたことについて、解雇権濫用であり無効だとし、雇用契約上の地位の確認及び未払賃金などを請求した。

裁判所は、学生・生徒の人間性、人格形成等についても関わることが予定される専門学校の教職員として高い倫理観を要求されると同時に、高位の管理職として職場の規律維持等について一般職員より重い責任を負っていたところ、本件メール送受信を行ったことは、職務専念義務や職場の規律維持に反するというだけではなく、教職員として適格性にも疑問を生じさせ、さらには学校の名誉信用にも関わるものであって、懲戒事由には一応該当する。

ただし、本件懲戒解雇は、いささか過酷に過ぎるといわざるをえないから、解雇権濫用として無効である、との判断を下した。

データの抜き取り

当然のことながら、会社の財産を盗む行為と見なされます。

東栄精機事件 大阪地裁 平成8.9.11

無断でコンピュータデータを抜き取り、メモリーを消去し、加工用テープを持ち帰った。

懲戒解雇事由が認められる場合だったが、通常解雇された事例。

会社側の処分が認められた。

携帯電話の私的利用

携帯電話の私的利用の問題は、多数生じています。

以下の判例は、解雇処分が妥当かという争点で争われています。

光安建設事件 大阪地裁 平成13.7.19

貸与を受けた会社の携帯電話を私的に利用したとして解雇された。

私用電話を受けたという相手から「迷惑な電話がある」との苦情があったが、この問題については証拠もなく、示談も成立していた。私用電話が発覚したのも初めてであった。

原告は同時に残業手当の支払いなどを請求。

裁判所は、解雇の無効と不就労期間の賃金及び休日に労働した部分の付加金の支払いを命じた。

ただし、不法行為による損害賠償として、私用電話の電話料相当16,520円を原告は被告に支払う義務があるとされた。

 

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