目次
賃金の2割カット
一度にカットできるのは、賃金の10%を超えることができません。
このため、20%カットしたい場合は、10%ずつ2ヶ月に渡って実施することになります。
昇給停止
法律による昇給の規制はないので、会社側の判断によって実施することになります。
ただし、公平に実施する必要があります。
降格による賃下げ
降格により賃金が低下する場合については、職位と職務内容が変わり、賃金はその職務内容に追随して決まることになるので、降格が有効である限り、原則として降格に伴う賃金引き下げは許されます。
行政解釈では、「職務の変更に伴う当然の結果であるから労働基準法第91条(1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。)の制裁規定の制限に抵触するものではない」(昭26.3.14基収第518号)とされています。
遅刻・欠勤の場合の賃金不支給
遅刻等の部分の賃金を支給しないことはノーワークノーペイの原則からして当然です。
この部分が給料の1割を超えたとしても、減給制限には抵触しません。
損害賠償
会社に重大な損害を与えた場合は、懲戒処分を行うと同時に、本人に損害賠償の請求を行うことができます。
懲戒処分を受けたことによって損害賠償責任が免責されるわけではありません。
また、損害賠償をしたからといって、会社側の懲戒権行使が制約されるものでもありません。
懲戒処分を行った後、その行為によって生じた損害賠償を求めることは、二重処分の禁止の原則にも抵触しないと考えられています。
ただし、損害賠償を別途行った場合は、そのことを情状の一つとして勘案し、処分の内容を決めるべきだといえます。
日勤教育・降車業務
運輸業では、業務指示等に違反した従業員に対し、車両運転業務を外すという措置が取られている場合があります。
西日本旅客鉄道会社事件 広島地裁 平成16.12.22
上司が労働者の落ち度を指摘したところ、同人が反抗したことを理由として、会社が日勤教育や懲戒処分に付したこと、他の上司が組合等から脱退するよう働きかけたことは不当労働行為に当たるなどと主張し、懲戒処分の無効確認、損害賠償を求めた。
裁判所は、日勤教育を継続する理由及び必要性は既に実質的にほとんど消滅していたこと、本件日勤教育は不当労働行為意思に基づくものであること等から、業務命令権を逸脱していると判断した。
退職願が出されている場合
従業員として雇用関係が継続している場合には、その退職を承認せず、懲戒解雇してもさしつかえありません。
ただし、次の2点に注意する必要があります。
(1) 退職が自動的に成立していないか
退職願が提出された場合、民法627条による退職の成立が考えられます。
具体的には、
退職願提出後2週間が経過したとき
完全月給制の場合、賃金計算期間の前半に退職を申し入れ、次期の初日をもって自動的に退職が成立したとき
退職が成立するので、懲戒処分が不可能になります。
※本人同意による退職日の延期か、上記期間内に懲戒処分を決定するしかない。
(2) 退職願の提出が、情状酌量事由となるか
認められれば、懲戒処分の強さがそれだけ弱まる。
なお、この場合、本人の違反行為事由の調査(横領・不正取引等)に長期間を要するようなとき、本人から万一退職後懲戒解雇事由が判明したときには、退職金の請求権を放棄しまたは受領した退職金を返還する旨の念書が本人の自由意思によって提出されたとすれば、それも有効である。
東洋化研事件 東京地裁 昭和41.8.24
懲戒に該当する非行をした従業員がすでに退職の意思表示をしているにもかかわらず、あえてこれを懲戒解雇するについては、その非行が当該従業員の多年の勤続の功を抹殺してしまう程度に重大なものであって、そうすることが被告会社の規律維持上やむを得ない場合であることを要する。