近年、企業の人件費削減に業務委託契約が多用されていますが、実態は業務委託ではなく、派遣若しくは労働者供給に該当する場合が多々あります。
労働者派遣、請負(業務委託)のいずれに該当するかは、契約形式(契約書の内容)ではなく、厚生労働省の告示による「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」に基づき、実態に即して判断されることとなります。
上記基準を満たさずに事業を行う者は、その契約等の名称に関わらず労働者派遣事業を行っている事業主と判断され、いくら業務委託契約と説明して契約を交わしていたとしても、実態が派遣等であれば、残業代や社会保険料を支払わなくてはなりません。
注文主(委託者)と労働者との間に指揮命令関係がある場合には、請負(業務委託)形式の契約により業務が行われていても労働者派遣事業に該当し、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の適用を受けることになります。
業務委託契約を交わしているが、実態が労働者派遣に該当していると思われる労働者様は至急、業務体制と契約内容の見直しを行うようにして下さい。
派遣と請負(業務委託)の区分基準に関する自主点検項目
以下、派遣と請負(業務委託)の区分基準に関する自主点検項目を挙げておきますので、自らチェックをしてみて下さい。
チェックの仕方として今回は、請負業者(業務受託者)の立場から見て各項目に該当するかどうかを判断して下さい。一つでも該当項目がありましたら労働者派遣の可能性があります。
1、労働者に対する仕事の割付け、順序、緩急の調整等を自ら行っていない。
2、業務の遂行に関する技術的な指導、勤惰点検、出来高査定等について自ら行っていない。
3、労働者の始業及び就業の時刻、休憩時間、休日、休暇等について事前に注文主(委託者)と打ち合わせ ていない。
4、業務中に注文主(委託者)から直接指示を受けることのないよう書面が作成されていない。
5、業務時間の把握を自ら行っていない。
6、労働者の時間外、休日労働は業務の進捗状況をみて自ら決定していない。
7、業務量の増減がある場合には、事前に注文主(委託者)から連絡を受ける体制としていない。
8、事業所への入退場に関する規律の決定及び管理を自ら行っていない。
9、服装、職場秩序の保持、風紀維持のための規律の決定及び管理を自ら行っていない。
10、勤務場所や直接指揮命令する者の決定、変更を自ら行っていない。
11、事業運転資金等を全て自らの責任の下に調達・支弁していない。
12、業務の処理に関して、民法、商法、その他の法律に規定された事業主としての全ての責任を負ってい ない。
13、業務の処理のための機械、設備、器材、材料、資材を自らの責任と負担で準備していない。又は、自 らの企画又は専門的技術、経験により処理していない。
14、業務処理に必要な機械、資材等を相手方(委託者)から借入又は購入した場合には、別個の双務契約 (有償 例 自動車のレンタル「賃貸借契約」)が締結されて いない。