派遣労働とは

常用型と登録型

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派遣元が決定する

派遣労働には、常用型派遣(特定労働者派遣事業)と登録型派遣(一般労働者派遣事業)があります。
登録型と常用型の違いは、派遣される業務内容によるものではなく、基本的には使用者である派遣元が決めるものです。

ほとんどは登録型

登録型派遣労働者は、派遣元に氏名や就業可能な業務などを登録しておき、仕事が発生したときにその派遣期間だけ雇用契約を結び、派遣先で働きます。

派遣元に登録をしても、すぐに希望通りの派遣先を紹介してもらえるとは限りません。

また、長期間、派遣先に勤務していて常用型とみられるものでも調べてみると登録型であることもあります。

なお、派遣元に登録しただけでは雇用契約を結んだことにはなりませんので、労働者は、複数の派遣会社に登録することが可能です。

登録型派遣は、派遣先の事情に左右されやすく、解雇問題の多くはこの登録型派遣で発生しています。

したがって、特に、身分が不安定な登録型の派遣には、中途での契約解除は許されないと考えなければいけません。

性別や正当な労働組合活動をしたことを理由とする契約解除(解雇)はもちろん許されません。
”中途の”契約解除は問題ですが、あらかじめ定められた期間の満了による雇い止めは、当然ありえる話です。

したがって、派遣労働者として働くということは、長期雇用を前提としない就労形態だということを、働く側も自覚しておかなければなりません。
これに対し、常用型派遣は、派遣先が変わっても派遣先がなくても、派遣元との雇用が継続するもので、登録型と比較すれば安定した雇用形態です。

パソナほか事件 大阪地裁 平成16.6.9

カメラ等の量販店が新店舗開業をすることになり、派遣会社にスタッフの調達を打診した。派遣会社は勤務地限定を前提に、スタッフを募集した。

採用候補者は、派遣先で研修を受けたが、派遣先としては、自社社員との格差が大きいと判断し、派遣会社との契約を撤回した。

派遣元は、候補者に対し、仕事が無くなった旨を伝え、代わりの仕事を探すとした。原告に対しては、エステのテレフォンアポイントの仕事が紹介したが、これを原告は断った。

派遣元は、原告を含めた該当登録者に対し、お詫び金として32.000円を振り込んだが、原告はこれを不満とした。その後、地域の労組に加盟し交渉。派遣元は、30万円を提示したが、合意には至らなかった。

原告はその後パートとして就労をしながら訴訟に及び、派遣元に対し2,886,000円(得られたはずの賃金2,121,000円、派遣先の指導による毛染め代15,000円、慰謝料50万円、弁護士費用25万円)、派遣予定先に対し同額を請求した。

裁判所は、派遣元との労働契約については、「解雇権留保付」の契約と認めた。そのうえで、委託契約不成立による原告の採用取り消しは、留保権付きの解雇権を行使したものとして是認できるとした。

また、派遣先に対する請求については、労働契約が黙示的に成立しているとは認められないとして、認めなかった。

そのうえで、派遣元は、原告に対し業務委託契約が不成立となれば派遣ができなくなることについて説明するべきところ、それをしなかったとし、信義則上の義務を怠ったとした。

この部分につき、25万円(慰謝料20こ万円、弁護士費用5万円)の支払いを派遣元に求めた。訴訟費用の負担は、原告の20分の1、派遣元の10分の1については、派遣元の負担とし、派遣先負担分を含めた残りについては原告の負担とした。

伊予銀行・いよぎんスタッフサービス 雇用関係確認等請求事件 松山地裁 平成15.5.22

原告は13年間にわたって派遣会社(当該銀行の子会社)から被告銀行に6ヶ月更新で派遣されてきたが、上司や同僚とのトラブルがあり雇用更新拒否により雇止めとなった。このことについて、雇用の維持と賃金の支払い、慰謝料 (銀行に対し400万円、派遣元に対し300万円)が請求された。

派遣会社との間には常用型派遣であること、派遣先とは黙示の雇用契約が成立していたこと、などが請求の根拠となっている。

判決:労働者側敗訴

裁判所は、派遣契約は、当該銀行に派遣されることを前提として、登録型派遣であると判断し、派遣法は、常用代替防止をも立法目的としている。このことから、同一労働者の同一事業所への派遣を長期間継続することによって派遣労働者の雇用の安定を図ることは,同法の予定するところではない。

派遣元会社は形式のみでなく社会的実体を有する企業であり、原告の就労条件等を決定し、賃金を支払ってきた。原告と派遣元との雇用契約は有名無実とはいいがたい。

派遣先との間に黙示の労働契約が成立していたとは認められない。よって、本人が雇用継続を期待したとしても、法の趣旨に照らすと、保護できるものではない、としている。

 

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