派遣労働とは

違法な派遣形態

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二重派遣は違法

業務委託契約が二重派遣の隠れ蓑に

派遣元から労働者を受け入れた派遣先企業が、さらにその労働者を別企業に派遣することは、「二重派遣」に該当し、違法です。
派遣法が認めている人材派遣とは「自己の雇用する労働者」を派遣するものであって、他者から受け入れた派遣労働者をそのまま別の会社に派遣すれば、中間業者が入ることによって賃金が不当に引き下げられる恐れがあるからです。

派遣元、派遣先とも、職業安定法違反として罰せられることになります(職安法第44条)。
この違法状態を免れるために、派遣先(下記B)から第2の派遣先(下記C)への派遣を「業務委託契約」にしているケースがあります。
違法と認められた場合は、B、Cともに罰せられることになります。

ジャパンネットワークサービス事件 東京地裁 平成14.11.11

代表取締役の地位にある者が、新規事業開発部長として他社の業務に従事することが前提となった労務供給契約は、労働契約である。

テンブロス・ベルシステム事件 東京地裁 平成15.10.22

派遣労働者の不法行為(私文書偽造)につき、派遣元の使用者責任が認められた(過失相殺5割)。
派遣元が15分から30分程度の面接で営業経験の有無等を確認したほかは、特段の研修、教育等を実施しないまま、労働者の資質をほとんど見極めないで直ちに派遣したため、派遣労働者の選任、監督につき注意が足りなかったこと等が認定された。

派遣先にも相当な不注意があったとして5割の過失相殺を認め、損害の50%(約360万円)の賠償を派遣会社に命じた。

デル、違法採用の疑い 自社で面接し派遣社員に

パソコン世界最大手Dell(米テキサス州)の日本法人、デル(浜田宏社長、本社・川崎市)が店頭販売員を採用する際、自社で面接を行った上で人材派遣会社に採用させ、派遣社員として就労させていた疑いがあることがわかった。

神奈川県警は、職業安定法が禁じた「職業紹介」にあたるとして、12日にも、法人としてのデルと、当時の採用担当の元社員(退職)1人を同法違反容疑で書類送検する方針を固めた。

県警の調べでは、デルは02年8月、同社製パソコンの店頭販売員として勤務を希望していた男性(30)と面接し、採用を決定。職安法に基づく職業紹介事業の許可がないのに、派遣会社に紹介した疑い。

違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金の規定がある。
男性は、川崎市のデル本社での面接で「採用です」と言われたうえ、社名入りの名刺を持たされたため、「デル社員として採用された」と思っていた。

しかし、04年2月ごろ、社会保険などについてデルに問い合わせた際に、派遣社員だと知らされたという。
同社は04年までの約2年間に約200人と同様に接触し、派遣会社に紹介していたとみられるという。

デル側は県警の調べに「自社で面接し優秀な人材を確保したかった。自社で直接雇用すると社会保険料などがかさむため派遣にした」と説明。県警は違法な採用活動をデルが主導する形で行っていたと判断した。

<デル広報本部の話>
法令に反し派遣会社に紹介したことは事実で、理解が不十分だった。04年に神奈川労働局の指導を受け、その後、是正した。

監督指導を受けた中には重大な違反事例もあった。

情報システム産業の請負会社のSEの社員が業務委託契約によりB社に派遣された。そこまではまだいいとしても、今度はB社からC社へと次々に回され、最終的に6社目の大手企業のシステム運用・開発の請負労働者として働いていた。

これを「構造的多重派遣」と呼び、いわば労働者を売買し、仲介した各事業者が中間マージンを得るという悪質なものである。
このケースはもはや、偽装請負というより派遣でもないとして、東京労働局は労働者供給事業の禁止に該当するとして職業安定法違反として認定した。

しかもこうしたやり方はシステム運用開発担当者を多数調達する手段としては業界では常識的にやられており、決して特異なケースではなかったという。

専ら派遣は違法

「専ら派遣」は違法派遣

企業が子会社として派遣会社を設立し、自社または特定の会社に派遣させる目的で派遣事業を行うことを「専ら派遣」といいます。

これは労働者派遣法で禁止されている違法派遣です(派遣法第7条)。
専ら派遣が自由に行われると、企業は、本来であれば自ら雇用すべき労働者を雇用せず、外部の子会社などを自社専用の労働力供給機関として、柔軟に労働力の供給を受けるようになってしまいます。

これでは、正社員として雇用される可能性がある労働者の雇用の機会を減らすことになります。
派遣先確保のための努力が客観的に認められない場合も、専ら派遣とみなされることがあります。

専ら派遣が行われている場合、厚生労働大臣は派遣元に是正を勧告することができます(派遣法第48条 、ただし、派遣労働者に占める60歳以上の定年退職者が3割以上である場合には勧告の対象とはなりません)。

それでも違反した場合は、派遣業許可の取消(派遣法第14条1項)、事業停止命令(派遣法第14条2項)の対象ともなります。

労働者派遣に関する罰則

適用除外業務に労働者派遣を行った場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です(派遣法59条)。
法またはこれに基づく命令の規定に違反する事実がある場合において、派遣労働者がその事実を厚生労働大臣に申告したことを理由として、当該派遣労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをした場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 となります(派遣法60条)。
その他、許可取消しもあり得ます。

一見しただけでは、違法か合法かは明らかではない

派遣元から派遣先へ派遣された場合であっても、派遣元が形式的存在に過ぎなければ、この派遣労働契約は名目的なものに過ぎず、派遣先が派遣労働者に対し、労務給付請求権を有し、賃金を支払っていると認められる事情があるときには、派遣労働者と派遣先との間に黙示の労働契約が成立していたと認める余地があります。

派遣労働者の労務管理を行っていない反面、派遣先が実質的に派遣労働者の採用、賃金額その他の就業条件を決定し、配置、懲戒等を行い、派遣労働者の業務内容・期間が労働者派遣法で定める範囲を超え、仕事の内容も、派遣先の正社員と区別し難い状況となっている など、がそれです。

しかし、違法な専ら派遣か、合法な派遣かを見分けるのは、簡単なことではありません。

マイスタッフ(一橋出版)事件 東京地裁 平成17.7.25

派遣労働関係は、事実上、派遣先での黙示の労働契約だったという訴え。

派遣元は、派遣先から依頼された条件(家庭科教科書の編集)の登録者がいなかったことから、新聞に派遣社員の募集広告を掲載した。原告は、これに応募し採用された。原告は、以下の理由により、派遣元会社と派遣先会社は事実上一体であると主張した。

派遣元企業は、派遣先の代表者が設立した企業であった。→ただし、派遣元が親企業に送った派遣社員等は35名で、親会社以外に常時100名ないし140名の派遣社員を送っていた。

採用面接には、派遣先の役員を兼ねる派遣元役員が当たった。派遣先企業の部長もオブザーバーとして参加した。

会場は派遣先企業の会議室であった。→派遣社員就業通知書には「当社派遣社員として下記の条件で雇用」と記載されており、補足説明にも「この度は当社派遣社員として一橋出版(株)への就業をご承諾いただき」とあった。

仕事内容も正社員と同様であった。徹夜も含む残業や、休日出勤もあった。→派遣元から残業時間の多さについて照会がきていた。派遣先の名刺を使っていた。

正社員と同じくタイムカードを打刻し、超過勤務・休暇・欠勤等の届出用紙も正社員と同じだった。
派遣料金が通常は賃金の20~30%のところ5%上乗せの格段な低率であった。

その後、6ヶ月の契約更新を3回行い、2年経過時点で編集業務が一段落したことから、期間満了1ヶ月前に雇止めを通告された。

原告は「私は派遣社員であるからやむを得ない」と、発言していた。
裁判所は、原告の労働契約は、雇用期間満了によって、有効に終了したとした。

派遣元は派遣先と別個独立に存在して営業活動をしていた、派遣先も一橋出版に限定されていなかった。兼任役員が面接を行ったが、その事実をもって直ちに派遣先が実質的な採用試験を行ったとは認められない。

面接会場が派遣先企業の会議室であったことや、派遣先部長が同席したことをもっても、実質的に派遣先が採用したとはいえない。名刺利用も、教科書検定にあたり文部科学省への出入りなどの便宜にすぎない。

料金が低率なのも、派遣先が財務的に苦しいという事情から派遣料抑制を要請したためである。また、雇止めについては、これまで原告から雇用期間に異議を唱えたことなどもなく、その都度、派遣元も手続どおり契約更新をしていたことから、この契約が「期間の定めのない契約」と実質的に異ならないとはいえない。

 

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