配置転換

配転命令権と権利濫用

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権利濫用の場合は無効

配転が配転命令権の範囲内であっても、権利濫用にあたる場合は無効となります。

配転命令権が権利濫用にあたるかどうかは、当該転勤命令の業務上の必要性と、本人の受ける生活上の不利益との比較衡量に基づいて判断されます。

判例は、当該転勤命令につき、次のような場合に権利濫用としています。

(1) 業務上の必要性が存しないとき
(2) 転勤命令が不当な動機・目的をもってなされたとき(業務上の必要性が存する場合であっても)
(3) 労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき
不利益の基準

賃金の減少や労働時間の延長、勤務場所の変更など、労働条件それ自体の不利益性
通勤時間の増加や、配転後の職場で未習熟の業務分野への適応を要求されることなど、労働条件に密接に関連する事項についての不利益性
労働者自身や同居の家族の健康の保持、未成熟の子弟の養育など社会生活上の不利益、等
上記のような状況ではなく、特段の事情の存する場合でないかぎり、権利濫用にはならないとしています(東亜ペイント事件 最高裁 昭和61.7.14)。

菅原学園事件 さいたま地裁川越支部 平成17.6.30

教員として採用された原告が、意見表明などを強く行ったことなどから、就職部へ配置転換命令を受け、さらに企業訪問の業務命令に従わなかったとして、普通解雇された。

裁判所は、就業規則に職種限定の定めがないことから配置転換について合理的であるとし、原告が円満な人間関係を築くことができていなかったことで、配転はやむを得ないとした。

そのうえで、解雇という最終手段を取るには、回避のための努力の形跡がなく、解雇そのものが用意周到に準備されたことが窺われ、解雇権の濫用として、賃金803万余円の支払を命じた。

マニュライフ生命保険事件 東京地裁 平成17.6.24

昭和50年入社の原告は希望退職の募集に応じなかったが、配置先が見つからず、次の職場が見つかるまでの待機場所として人材開発室に配置された。

その後、他の受入職場がなく、印刷発送室に事務担当職務のポストを創設し、そこに配置された。

原告はこの配転により精神的苦痛を受け、皮膚炎等を発症・悪化したことと、印刷配送室の環境がセクハラ行為の横行する劣悪な状況であり、ここで肉体労働を強いられたこと、低いタイトル(肩書き)をつけられたことにつき、慰謝料等2,526万円を請求した。

裁判所は、これら原告の申出を全面的に棄却した。

(1)人材開発室は人員削減に寄与したことは否定できないが、その存在自体を違法ということはできない。

(2)原告の業務遂行効率が他の者に比べて低く、人材開発室への配置そのものには業務上の必要性がないと はいえない。したがって、ここへの配置を退職勧奨拒否の報復とまでは認められない。

(3)発送室への配置にあたっては、事務ポストを創設し、ここでの業務を、システム化や業務の問題点の洗 い出し、マニュアル作成など事務的な仕事に限定したことから、苛酷な肉体的労働とはいえない。労災の 申請もあったが、根拠を欠く。セクシュアル・ハラスメントが日常的に行われているという証拠もない。

(4)業務上のタイトルについての要求は、相当ではなく、かつての同僚の行っている業務を担当させるべき 権利を有するともいえない。

太平洋セメントほか事件 東京地裁 平成17.2.25

管理職たる従業員が、出向先において、アルバイトでもできるような単純肉体労働を担当する部署に配置転換されたのは、退職勧奨や他社への出向に同意しなかったことに対する嫌がらせであるとして、本件配転命令の無効確認と、慰謝料支払を求めた。

裁判所は、配転無効確認について、過去の意思表示の効力を問題にするもので確認の利益を欠くとして却下したうえで、本件配転には業務上の必要性があり、配転後の最初の半年間、通信教育の事務的作業に当たらせることを不合理ということはできないとした。

富士霊園事件 東京地裁 平成15.7.14

担当業務を交代する人事異動を拒否した総務部長及び業務部長に対する解雇は、原告らの地位、行為の態様、被告の業務運営への影響、事後の対応などに照らすと、就業規則所定の解雇事由があり、解雇権の濫用にはあたらない。

名古屋港水族館事件 名古屋地裁 平成15.6.20

水族館職員に対する2度の職務変更命令につき、1回目は労働条件に従前と実施的に変化がないと認められ、2回目は他の職員との対立の解消の必要があったと認められ、いずれも権利濫用に当たらないとされた。

労働者の被る不利益として考慮されるのは、労働者の同居の家族の健康の保持等一定の社会的意義を有するものに限られ、配転後の労働条件が全体として従前と同等の範疇にある場合、客観的な不利益や差別の結果が否定される以上、使用者の差別的意図も否定されるのが通常とし、二度にわたる職務変更(飼育展示課主査から部下なし飼育展示課副長への昇格、同副長から管理部業務課副長への更迭)をいずれも適法としている。

西日本電信電話事件 大阪地裁 平成15.4.7

構造改革計画による債権者らに対する各配転命令は、それぞれ業務上の必要があり、同人らの受ける不利益は通常甘受すべき程度を著しくこえるものではないし、不当な目的に基づくともいえないことからすると、いずれも、権利の濫用または不当労働行為に当たるということはできないとの判断から、配転等差し止め仮処分命令申し立ては却下された。

新日本製鐵(総合技術センター)控訴事件 福岡高裁 平成13.8.21

北九州から千葉県富津への転勤命令。

一審の福岡地裁(平成11.9.16)は、就業規則・労働協約に配転規定が存するうえ、所属先の研究所の機能が千葉へ移転することに伴う転勤命令であるから、業務上の必要性があり、不当な動機、目的は認められず、原告らが受ける不利益は社会通念上甘受すべき程度を著しく超えているとは認められないとした。

控訴審も、会社側が単身赴任手当の支給など援助措置を講じていることなどから、転勤命令は権利の濫用に当たらず有効として、一審を維持した。

キノ・メレスグリオ事件 東京高裁 平成12.11.29 東京地裁 平成9.1.27

経営悪化により、経費削減、賃金の圧縮を行う会社側が、人員整理(パート→準社員→正社員の順で退職勧奨)を行う中、退職勧奨を断った正社員に対し、別工場で同じ仕事があったため配転命令を行った。

これに対し労働者が、通勤時間が片道1時間から2時間に延長されるとしてこれを断ったため、業務命令違反として懲戒解雇された。

裁判所は、会社側の嫌がらせなど不当な目的は認められないとして、本件配転命令が労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとまではいうことができないから、権利の濫用とすべき特段の事情は認められないとした。

放送映画製作所事件 東京地裁 平成6.10.27

管理職への昇進については、・・・一般的には、企業の運営のために管理職のポストをどの程度設けるかを決定するについてだけでなく、昇格人事において、その限られた管理職ポストに起用する者を選定するにあたっても、使用者である会社は、その者の執務能力、協調性、指導力等諸般の事情を考慮して当該役職の適格者であるかどうかを決定するについて広範な裁量権を有しているというべきである。

東亜ペイント事件 最高裁 昭和61.7.14

営業マンに対する神戸から名古屋への転勤命令拒否を理由とする懲戒解雇につき、本件における同居中の母親や保母をしている妻を残しての単身赴任となる生活上の不利益は、転勤に伴い通常甘受すべき程度のもので、本件転勤命令は権利濫用にあたらないとして、原審を破棄・差し戻した事例。

業務上の必要性の程度について、判例は、「当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当ではなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである」としている。

女子学院事件 東京地裁 昭和54.3.30

使用者は、労務指揮権に基づき、従前の業務とは異なる業務を命ずることができる。

被告は「事務職員」として会計の職務に従事していた。したがって、学院の事務部門全般に従事することを雇用契約の内容としており、会計事務から庶務課設備係への配置転換は、雇用契約で定められた業務の範囲を逸脱するものではなく、人事権の濫用にもあたらず有効とされた。

セーラー万年筆事件 東京地裁 昭和54.12.11

使用者による部長職からの解任等につき、人事権の濫用であるとして、部長職の地位にあることの確認等を求めた事例。

使用者が被雇用者をいかなる役職に就けるか、あるいはその役職を解くかは、雇用契約、就業規則等に特段の制限がない限り、雇用契約の性質上、使用者が、業務上、組織上の必要性、及び、本人の能力、適性、人格等を考慮して、自由に決定する権限を有していると解するのが相当である。

これを本件についてみるに、被告会社の右権限を制限する特段の事情は認めえないから、被告会社は、原告を役職に任命、解任する裁量権を有していると認められる。そして、本件解職処分が、その裁量権の範囲をこえまたはその濫用があったと認めるに足る証拠はなく、他に本件解職処分が無効であると認めるに足る証拠はない。

三楽オーシャン事件 熊本地裁八代支部 昭和42.7.12 ほか

一般に、労働契約は、労働者がその労働力の使用を包括的に使用者に委ねること内容とするものであり、個々の具体的労働を直接約定するものではないから、使用者は労働者が給付すべき労働の種類、態様、場所等について、これを決定する権限を有するものであり、従って使用者が業務上の必要から労働者に配置転換なり、転勤を命ずることは原則として許される。

国鉄仙台鉄道管理局事件 仙台地裁 昭和44.2.24

転勤命令を受けた国鉄職員が、右転勤命令を退職の勧奨に応じなかったことに対する報復であるとして、地位保全の仮処分を申請した事例。

具体的な転勤命令がどの程度の合理性があるか、どうか、その人事に報復的な意図が存在していたのではないか、更にいえば転勤を手段として退職に応じなかつた本人に不利益を与えたかどうかが検討さるべきであって、若しこれに合理性が乏しく且つ報復的な意図が存在したとすれば、転勤命令を受けた本人は転勤するくらいなら退職した方がよいという気持ちに追い込まれないとも限らず、このような転勤命令を人事権の名において是認することは、転勤に藉口(※しゃこう:言い訳とすること)して退職を強制する道を開くこととなるので、かかる命令は人事権行使の正当な範囲を逸脱した退職の強要というべく、前記協定に違反し無効であることは明らかである。

労働者の不利益を図る基準としては、次のようなものが考えられます(名古屋港水族館事件 名古屋地裁 平成15.6.20)。

(1) 賃金の減少や労働時間の延長、勤務場所の変更など労働条件それ自体の不利益性
(2) 通勤時間の増加や、配転後の職場で従前未習熟の業務分野への適応を要求されることなど労働条件に密  接に関連する事項についての不利益性
(3) 労働者自身や同居の家族の健康の保持、未成熟の子弟の養育など社会生活上の被利益

 

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