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代償措置を取ったか
配転命令とあわせて、不利益を緩和する代償措置を取ったか否かも判断材料となります。
川崎重工配転拒否事件 大阪高裁 平成3.8.9
神戸工場の管理部門から岐阜工場の生産部門への配転。
婚約者との別居等を理由として配転拒否となった。
裁判所は、業務の必要性(合理的な人員配置)、人選の合理性があり、なおかつ、他の不当な動機・目的がない。さらに会社は、社宅の提供や婚約者の就職あっせん等の配慮をしていることなどの事情を総合すれば、従業員の被る不利益も通常甘受すべき程度を著しく超えるものとは認められないとして、配転命令拒否による普通解雇を有効とした。
労働協約と人事異動
人事異動命令は経営権に基づくものですが、労働協約によってこれに制限を与えることは可能です。
「人事異動については、組合と協議する」とか、「組合役員の配転、転勤については組合と協議決定する」とか、「人事異動は組合の同意を要する」などを、会社と組合との間で合意し、労働協約とした場合は、法的な効力が生じ、使用者が労働協約の定めを無視して人事異動をするわけにはいかなくなります。
ただし、会社側が誠意をもって協議しても協議が整わない場合については、会社は一方的に人事異動を発令することも可能だとされています(池貝鉄工事件 最高裁 昭和29.2.21)。
北海道放送事件 札幌高裁 昭和41.4.28
労組が同意を拒絶できるかどうかは、会社が労組組織部長の配転を実施すべき業務上の必要性の程度とその配転によって生ずる組合業務の支障の程度との比較衡量の問題に属する。
本件配転は会社としては業務上相当な理由と必要性があり、他方組合がそのことにより被る支障の程度は組合の存立または運営について致命的といえるほどの支障がないから、会社の人事権が優先し、組合のなした同意拒否にかかわらず配転は有効である。
その限りにおいて組合の同意拒絶は権利の濫用である。
配転が就業規則違反でないこと
当然のことながら、配転の手順が就業規則に違反していないこと。
他の候補者がいないか
労働者の個人的事情と同時に、他の複数の同僚に対し異動の可能性があったかどうかも、確認しておく必要があります。
不当な動機・目的を認定したもの
フジシール事件 大阪地裁 平成12.8.28
配転命令拒否を理由として、降格。
大阪の出向先で技術開発部に属していた労働者に対する筑波の印刷工場でのインク缶運搬(肉体労働)業務への配転命令を、退職勧奨拒否に対する嫌がらせとして無効とした。
マリンクロットメディカル事件 東京地裁 平成7.3.31
社長の経営方針に批判的なグループを代表する立場にあった労働者を快く思わず、東京本社から排除し、あるいは配転に応じられず退職することを期待してなされた配転命令を無効とした。