希望退職・退職勧奨
景気悪化や経営不振にともない、生産・販売・受注量に比べ、雇用量が過剰になってしまった場合、その過剰雇用を解消するため、社員に自主的な退職を呼びかけて合意退職をしてもらうことをいいます。
「従業員を解雇する」となると、当然正当な理由が必要です。正当な理由がないと、解雇自体が無効になります。また、正当な理由があったとしても、「なぜ私が辞めさせられなければならないのだ」「なぜ解雇する必要があるのだ」と従業員とトラブルになることがあります。
しかし、希望退職は「合意」して退職するわけですから正当な理由は必要なく、解雇のようなトラブルは起きません。これが希望退職の最大のメリットです。
希望退職制度とは、業績が悪化した企業が人員削減のために一定の期間限定して行うものです。
早期退職優遇制度とは、企業側の事情よりもむしろ社員個人として職業に関する生涯計画の選択肢の1つとして利用されるもので期間は限定しません。
定年前の中途退職による経済的な不利益を補い、60歳以降の労働の機会を有効な時期に得ようとする社員が、定年を待たずに退職する場合の生活設計の一助となるものです。
この2つの制度で大事な点は、あくまで労働者の意思によるもので、会社側からの退職勧奨とか整理解雇とはまったく異なることです。
退職勧奨なり整理解雇をする場合には、労働基準法第19条から同21条に定める解雇手続が必要となります。
退職勧奨とは、企業経営の悪化を背景に使用者が社員に対して合意解約を行うことで、あくまで労働者の任意の意思を尊重する必要があります。
行き過ぎた退職勧奨は解雇に該当し、場合によっては損害賠償の対象になります。また退職勧奨をする場合は勧奨者数、優遇措置の有無、勧奨の回数・期間、本人の拒否の態度などを総合的に考慮し、労働者の自由な意思決定が妨げられていないかどうかを判断しなければなりません。
一方、整理解雇は判例などから、企業の維持・存続を図るため人員削減が必要であること、配置転換・出向・希望退職者の募集など、会社が解雇回避の努力を十分尽くしたこと、解雇対象者の選定基準が合理的であること、解雇手続きが妥当であることなどの要件が適切に求められています。
希望退職制度を実施する場合は、その目的、応募条件(年齢・勤続年数・職種など)、期限、人数などを公表しなければなりません。公表は主に通達、掲示板、メールを利用して行います。
早期退職優遇制度との比較
1、希望退職は、経営不振への対応策として期間を限定して集中的に行われますが、早期退職優遇制度は、 恒常的な制度として1年を通じて実施されます。
2、希望退職の目的は雇用調整ですが、早期退職優遇制度の主たる目的は、中高年齢者の生活設計の支援で す。
3、希望退職は、雇用調整する人数をあらかじめ計算して募集人員を決めて行われますが、早期退職優遇制 度は、対象者や利用人数などを決めないケースが一般的です。
整理解雇との比較
1、雇用調整のために、雇用契約を解除させ、結果として人件費の総額を減らす目的で行います
2、希望退職は、本人と会社双方の合意に基づいて雇用契約を終了させますが、整理解雇は会社の一方的な 意思で雇用契約を解消するため、裁判所の判例で厳格な要件(整理解雇の4要件)がついています。
3、希望退職は、退職日を双方の話し合いで自由に決定できますが、整理解雇は解雇する30日前までに予 告、もしくは平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払わなければなりません 。