セクハラ行為が行われた場合の責任については、会社が負う責任と、セクハラをした当事者の責任の両方責任があります。
セクハラ行為は、法律上不法行為とされ、行った個人に対して慰謝料を請求できることになります。
また、会社も雇用している社員に対しては、その職場環境を適正なものに保つ責任があり、その責任に違反してセクハラ行為が起こってしまった場合には損害を賠償しなければなりません。
このように、セクハラ行為に対しては、会社と当事者個人の両方に損害賠償を求めることができるのです。
(1)加害者の民事上の責任
加害者は、民事上の責任として損害賠償請求をされたり、刑事罰に科せられるほか、社会的信用、社会的地位、円満な家庭生活などを失うことになります。
不法行為責任:不法行為責任とは、故意または過失によって、他人の権利を侵害し、他人に損害を与えたことにより生じる損害賠償責任です。
セクハラは被害者の尊厳、名誉、プライバシーなどを傷つけます。被害者の人格権を侵害したものとして、不法行為に基づく損害賠償責任を問われることになります。
多くの裁判例において慰謝料請求がなされているものは、この不法行為に基づく損害賠償責任を根拠としています。
(2)加害者の刑事上の責任
セクハラは、その態様が身体接触を伴う場合には、意に反する性的な言動として、強姦罪、強制わいせつ罪に問われる場合もあります。
その言動によっては、傷害罪や暴行罪が成立する場合もあります。また、身体接触がない場合でも、名誉毀損罪、侮辱罪が成立する場合もありますし、その他、迷惑防止条例や軽犯罪が問題となる場合もあります。
軽い気持ちで行なった言動によって、犯罪者となってしまうケースもあるということを、しっかりと自覚しておかなければなりません。
その他、加害者は、通常は、所属する組織の就業規則に定められた懲戒事由に該当することになりますので、懲戒処分を受けることになります。
さらにセクハラをしたという事実は、家族にとっても許容できない場合も少なくなく、最悪のケースでは離婚に至る場合もあります。
(3)企業の民事上の責任
セクハラは社員個人の問題ではありません。セクハラを放置すれば、企業にとっても、大きな責任が生じることになります。
不法行為責任:民法では、社員が「職務の執行につき」第三者に損害を与えた場合、使用者である企業に使用者責任として、加害者である社員と共に損害賠償責任を負うことになります。職場で行なったセクハラである場合、「職務の執行につき」第三者に損害を与えたと判断される場合が多いでしょう。
債務不履行責任:企業は、社員に対し、雇用契約に基づく付随義務として、従業員の労働環境を調整し、快適な環境を提供する義務があります。
従って、セクハラを認知したにもかかわらず、放置した場合には、この義務を怠ったものとして、債務不履行責任を負うことがあります。
(4)企業の均等法上の責任
企業名の公表:改正前の均等法では、企業には、セクハラ防止に関して配慮義務のみしか規定されておらず、罰則等は定められていませんでした。
しかし、2007年の改定によって、新たに企業にセクハラ防止に関する措置義務が科されたため、何ら対策を講じず、是正指導にも応じない場合には、企業名が公表されることになりました。
過料:また、厚生労働大臣が、会社である企業に対し報告を求めたにもかかわらず、報告を行わない場合や、虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料に処せられることになりました。