派遣労働とは

派遣契約のトラブル

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事前打ち合わせ後の不採用

派遣社員の受け入れに当たっての事前面接が禁止されていることから、「打ち合わせ」の名目で、派遣スタッフと接触を試みたとしても、個々のケースによって程度の差はありますが、「打ち合わせの時点ですでに雇用関係が成立していると見なされる可能性がある」という厚生労働省の見解が出ていますので、注意する必要があります。
面接に要した日当と交通費の請求もされますし、場合によっては解雇と見なされ、不採用に対する損害賠償の可能性も生じてきます。

性差別の禁止

派遣契約に派遣労働者の性別を記載することも禁止されています。

派遣先企業は、派遣契約でどのような業務において、どの程度の職務遂行能力のある者を何人派遣してほしい、といったことを求めることができるにすぎません。

妊娠を理由とする交替
均等法による母性保護は派遣社員にも適用されますから、妊娠中の通院時間の確保や、定期健診などは、派遣労働者に認めなければなりません。
この不就労部分の派遣料金の取り決めについては、派遣先と派遣元との契約によります。

派遣先は妊娠したことのみを理由として、派遣社員を切り替えるよう派遣元に求めることは、合理性が認められません。
なお、派遣労働者が休みをとる日の代替要員を求めることは可能です。

派遣料金が減額されたことを理由に時給を下げる
派遣先の要求により派遣会社に支払われる派遣料金が切り下げられることがあります。
しかし、派遣スタッフは派遣元との間の契約に基づいて働いているわけですから、それを理由として契約途中で時給を引き下げることはできません。

ただし、契約更新時に契約条件を変更することは可能です。
まれなケースとして、トラブル発生の責任が派遣スタッフ側にあり、派遣先が派遣元に損害賠償を請求し、派遣会社がこれを支払うことがあります。
この場合、派遣元は派遣スタッフに賠償金の請求を行うことは可能です。
しかし、このケースでも、一方的に給料から天引きすることは禁止されています。

トライアルターム

派遣先で行われるトライアルターム(試用期間)は、派遣先が派遣スタッフを特定するためのものであれば、労働者派遣法違反です。
複数の派遣会社から3人派遣させて、1週間働らかせて採用したのは1人のみというケースでは、派遣先がスタッフの働きぶりをみて採用決めていると見なされてもしかたがありません。
この場合、派遣先と派遣労働者との間に、当初から雇用関係が生じていたと判断される可能性が生じます。

「一般事務」で働らいてる場合

労働者派遣法の改正により「臨時的・一般的派遣」が認められました。
「一般事務」はこのタイプに属します。

臨時・一般の派遣では、「就業場所ごとの同一の業務に、継続して3年を超えてはならない」と決められています。
これに違反した場合は、厚生労働大臣が派遣先に対してスタッフを雇用するよう勧告を行うことになります。
仮に派遣スタッフが途中で交代したとしても、その期間は通算されますので、臨時・一般タイプの派遣労働者の受け入れには注意が必要です。

労働者派遣法は、派遣元に対し、同一業務が1年を超える日を派遣先に通知するよう、義務づけています。
なお、「一般事務」が何を指すか分からないという問題を避けるために、「対象業務:事務、電話および来客への対応、コピー業務、備品補充等」といった具合に、可能な限り具体的な仕事内容を列記するのも、一つの方法です。

派遣先は交通費を払ってはいけない
適正な労働者派遣事業においては、派遣先と派遣労働者の間には指揮命令関係のみが存在すること条件です。
したがって、派遣先から派遣労働者に交通費の支払いが行われては、指揮命令関係のみとはいえないため、適正な受入とはいえません。

争議行為中の派遣導入は禁止
労働争議の最中に派遣を導入することは、労働者派遣法で禁じられています。
職業安定法20条には、職安が争議行為の妨げにならないよう労働委員会の通報をうけ職業紹介を停止するという規定があり、これを労働者派遣の場合にも読み替えて適用することが決められているからです。

名目上「個人事業主」としての派遣

使用者が労働者の雇用責任を回避するため、脱法的に「個人事業主」とすることは認められません。
残業代の支払いや、年次有給休暇の付与、雇用保険・健康保険への加入など、派遣元が使用者として行うべき責任を放棄して、労働者を「個人事業主」として取り扱うことは認められません。

派遣契約の終了

雇用契約期間中の打ち切り
契約期間の定めがある労働契約で、中途解約が認められるのは、どうしても働き続けられないやむを得ない事情がある場合に限られます。
派遣元と派遣先が派遣労働者の雇用の安定を図るため、できる限り努力しなければなりません。

興和株式会社事件 大阪地裁 平成10.1.5

運転手の派遣を内容とする業務請負契約。
請負契約の解約により余剰となった派遣運転手の解雇が、整理解雇の法理に照らして無効となった。
派遣労働者に責任がないのにもかかわらず、契約期間の途中で労働者派遣契約を解除する場合には、派遣労働者の雇用の安定を図るために、派遣元と派遣先がそれぞれ講じるべき措置について、「指針」では下記のとおり定めています。

派遣先が途中で契約を打ち切るときは、賃金30日分相当の損害賠償等を行う
特に、派遣先の都合で労働者派遣契約を中途解除する場合には、派遣労働者の新たな就業場所を確保するために、派遣元と派遣先が連絡を取り合ってできる限りの努力をすることが求められています。

改正労働者派遣法では、派遣先都合で契約解除を行う場合、派遣先は少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の賃金相当分の損害額を支払うよう義務づけられました。
なお、日数が30日に満たない場合は、不足日数分以上の損害賠償で、これを充てることもできます。

【労働者派遣契約の解除にあたって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置】

派遣元に対して(派遣元指針第2の2)

(1) 契約の中途解除を行った派遣先と連携して、派遣先の関連会社を就業先として紹介してもらうなどにより、派遣労働者の新たな就業の確保を図ること。

(2) 中途解除に伴って派遣労働者を解雇しようとする場合には、労働基準法等に基づき雇用者責任を果たすこと。
派遣先に対して(派遣先指針第2の6)

(1) 派遣先の都合で中途解除する場合には、派遣元に対して相当の猶予期間をもって契約解除の申し入れを行い、了承を得ること。

(2) その際に、自社で派遣就業していた派遣労働者に対しては、派遣先の関連会社を次の就業先として紹介するなど新たな就業場所の確保を図ること。

(3) 新たな就業場所の確保ができない場合には、派遣元に対して中途解除しようとする日の少なくとも30日前までにその旨を予告するか、予告を行わない場合は派遣労働者の30日分以上の賃金相当額を損害賠償として支払わなければならないこと。また、派遣先は派遣元と十分に協議のうえ、適切な善後策をとること。

(4) 派遣元から派遣労働者を契約期間満了前に解除した理由を求められた場合には、これを明らかにすること。

この措置について、30日分以上の補償をすれば派遣契約途中の契約解除が自由にできるという誤解がありますが、当該派遣労働者にとっては、当初の派遣契約が生きていますから、派遣元は相応の補償をする必要があるといえます。

派遣先から契約解除された場合、当該派遣労働者は、派遣元に対し少なくとも残存期間について別の派遣先のあっせんを求めることができます。
別の勤務先のあっせんが得られない場合は、派遣先に勤務していたら得られたであろう報酬について賠償請求することができます。

派遣元が新たな就業先を提供できなかったことが原因で、派遣労働者が働く意欲があっても働けなかったときには、派遣元は派遣労働者に賃金を全額支払う義務があります。

民法第536条第2項
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

打ち切りにそれなりの理由があるとしても、少なくとも「使用者の責に帰すべき事由」のよる休業の場合、平均賃金の60%の休業手当の支払い義務が発生し、これを支払わない会社は処罰の対象となります(労働基準法第26条) 。

契約解除理由の明示

派遣先は、契約期間が満了する前に契約解除しようとする場合に、派遣元から請求があれば、その理由を派遣元に対し明らかにすることとされています。

派遣労働者の技術や経験などと派遣先とのミスマッチによる契約解除の場合は、事前に派遣元による業務内容の把握が十分であったかどうかの確認も必要でしょう。
不十分であった場合は、派遣元としての責任を問うべきです。

労働者側からの解除

使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。(労働契約法第17条第1項)

派遣元は、別の派遣先を探す努力をする
また、派遣元には契約期間の途中で解除された派遣労働者をそのまま解雇するのではなく、関連会社への就職あっせんをするなど雇用機会の確保を図る義務もあります。

派遣先事業主にも、契約解除を申し入れるに当たっては、相当の猶予期間をおいてからするなど、派遣労働者の身分の確保を図る措置が求められます。
派遣先が派遣社員の「差し替え」を求める場合にも、合理的な理由が必要です。

派遣元と同様、派遣先にも契約解除した派遣労働者を関連会社へあっせんするなど雇用機会の確保を図る義務があります。

契約途中で解除した派遣先には、残存期間を勘案した上で相当の賠償をすべき義務があります。

損害賠償等に係る適切な措置(派遣先が講ずべき措置)

派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、労働者派遣契約の解除を行おうとする日の少なくとも30日前に派遣元事業主にその旨の予告を行わなければならないこと。

当該予告を行わない派遣先は、速やかに、当該派遣労働者の少なくとも30日分以上の賃金に相当する額について損害の賠償を行わなければならないこと。
(労働省告示第138号 平成11.11.17)

エキスパート・スタッフ事件 東京地裁 平成9.11.11

契約の途中解除を避けるために派遣元会社が新たな派遣先を紹介したが、派遣労働者がこれを忌避した。
このことで、派遣元は義務を果たしているとされた。

概要
原告側労働者X及び被告会社Yは、平成8年6月3日から同年11月末日までの間、Xを訴外A会社に派遣し、校閲業務に従事させるという内容の労働契約を締結した。
Xはこの労働契約に基づきAにおいて職務を遂行していたが、派遣開始後1ヶ月もたたないうちに、AからYに対し、Xの勤務態度について苦情の申し入れが行われる等、Xの派遣を中止してほしい旨の要求がなされた。

これを受けてYはXを解雇することとし、Xとの交渉を経て、本件労働契約の解約と共に、YがXに対して9月1日から11月30日までの間、Xの生活を保障する趣旨で、新しい就職先を紹介することに同意した。
Xは新たな就職先の紹介がなされなかったとして、Yに対し債務不履行による損害賠償を求めて訴えを提起した。

判決:労働者側敗訴
Yは、Xとの合意に基づく義務として、少なくとも9月1日から11月30日までの間Xが働くことができ、本件労働契約と同程度ないしそれ以上の賃金その他の労働条件を内容とする労働契約を締結できる相当な見込みがある、あらたな就職先を紹介する必要がある。

Yは、Xに対して、株式会社Bを紹介し、責任者による採用面接を受けることができるよう段取りをしている。
そして、Bの採用面接において、Bの責任者は、本件労働契約に比べて高額の賃金と、他の点でも特に問題にならない労働条件を提示した上でXをすぐにでも採用したいと告げている。
以上の事実から、YはXとの合意に基づく義務を果たしたといえる。

派遣労働者から辞める場合

派遣期間の満了前に退職することは、契約違反になりますので、派遣労働者は勝手に退職することはできません。
就業規則等に契約期間途中であっても退職できる定めがある場合には、それに従って退職することになりますが、特段の定めがない場合にも、なるべく合意解約ができるように、十分話し合うことが大切です。

残念ながら派遣元の理解が得られなかった場合であっても、やむを得ない事情があるときには労働契約の解除を申し入れることができますが、それが労働者の一方的な過失による場合には、派遣元から損害賠償請求をされる可能性があります(民法第628条)。

もし、損害賠償請求をされた場合は、その請求内容が適切なものか、損害賠償に応じるべき範囲など、お互いに納得できるまで十分に話し合うことが必要です。

ただし、あらかじめ明示されていた労働条件と実際の労働条件とが異なっていたことを理由に、労働者が退職を申し出る場合には、雇用契約をただちに解除することが認められています(労働基準法第15条)。

派遣労働者を解雇したい場合

派遣期間が定まっていない場合、派遣労働者にも労働基準法の解雇の条項が当然適用されますので、使用者である派遣元には少なくとも30日以上前に予告するか又は日数の不足分は解雇予告手当の支払義務があります (労働基準法第20条)。

登録型派遣労働者の場合も、雇用期間が2ヶ月を超える場合には、継続的な雇用関係があるとみなされて、上記の手続きが必要になります。
2ヶ月未満の場合でも、継続更新を続けて2ヶ月を超えるようなら、同様の手続が必要になります。

また、使用者が労働者を解雇しようとする場合には、合理的な理由がなければなりません。
合理的な理由とは、「誰が見ても解雇にせざるを得ないほどの甚大な理由」をさします。

ですから、単に「能力が足りない」「社風に合わない」などという理由だけでは解雇は認められません。
解雇に際しては、解雇理由を明らかにした書面の交付も必要になります。

労働者の能力水準をよく確認する必要がある

派遣元には、派遣契約をするに当たって、派遣労働者が就業すべき業務について、当該労働者の知識、技術や経験水準などを事前に把握・確認しておく業務があります。
つまり、適正を見極めた上での派遣をすべき義務があるといえるのです。

次のような場合は、契約解除の合理的な理由を欠くと考えられます。
「思ったより仕事ができない」
たまたま派遣先で派遣労働者の業務処理に適正が欠けていたからとして契約解除(解雇)されたとしても、それは労働者の責任というより適切な情報把握の義務を欠いた派遣元の責任ということができます。

「社内の雰囲気に合わない」「性格が暗い」
いずれも合理的理由とは認められません。

「予算が取れなくなった」「組織が縮小された」
派遣先の都合であって、ただちにスタッフを解雇する理由にはなりがたいものです。
期間満了時には終了しやすい
このように、契約期間中途での解除に対しては、法的に困難な場合が多いのですが、派遣労働が「有期雇用」である以上、契約満了時の解約の場合には、更新が繰り返されている場合を除き、契約を終了は可能となります。

 

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