解雇とは

協調性欠如による解雇

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協調性と解雇について

協調性に欠けるという理由だけで解雇できるか

協調性が欠如しているとされる場合でも、原則として、その是正のための教育的指導を行うことが必要です。
矯正が困難だと判断されるとき、はじめて解雇が有効とされます。

勤務態度不良の解雇通告の場合は、まず次の点について確認することが必要です。
(1) 就業規則などの解雇理由に該当していること

(2) その行為が繰り返し行われていること

(3) 会社がその者を教育・指導するなど、改善のための努力を行っても改善が見られないこと

(4) その行為により業務の遂行に具体的な支障があったこと

(5) その者より勤務態度が悪い者を不問にしていないこと

なお、当該従業員の行動によって会社の業務が妨害されたり、上司への暴言や暴行等が繰り返しなされた場合で、その原因が心の疾患にあると思われる場合は、就業規則上の「心身の故障のため職務に堪えない」に該当するとして、普通解雇とするのが妥当だといえます。

職場における協調性

日本の労務管理システムでは、従来から協調性が重視されてきました。
それは、第一に、労働力評価にかかわっています。
採用時には、特定の資格や能力よりも会社の構成員としての資格、よきメンバーたることが重視されています。

キャリア形成についても、協調性は個別の能力の基盤に位置するものとして評価されています。
第二に、労働力評価は、人事考課システム(成績考課、情意考課、能力考課)を通じて日常的に客観化されています。
情意考課の一要素である協調性の欠如は、人事考課上極めて不利な取扱いがなされることになります。

第三に、協調性は、具体的な共同作業にとっても不可欠な要素です。
国際競争力の激化に伴い「多能工化」が押し進められ、種種の状況に的確に対応しうる能力が重視されるようになっています。
自己の専門性のみに固執する職人的生き方は許されなくなりました。

対応能力の欠如は、チームメイトたる同僚に多大の迷惑をかけることになります。
組織内での共同作業が求められる限り、協調性は不可欠です。
解雇理由の説明が必要

協調性を理由とする解雇は、最近増大する傾向にあります。例えば以下のようなケースがあります。
本来性格的に自己主張が強く、自分が思っていることを抑制できずに、すぐに口に出したり行動に表わすタイプ。
人に選り好みが激しく、好きな人には親切丁寧だが、嫌いな人には冷淡でおざなりと両極端で、人間関係においても摩擦が多い。

被害を誇大に妄想する傾向は否定できず、自分がいじめられそうな気配を少しでも感ずると、狂ったように相手を攻撃し始める。

しかし、単に「周囲に協調しない」というだけの理由で解雇したのでは、解雇権の濫用と受け取られても仕方がありません。
場合によっては、その人の周囲の側に問題があることもあります。
当然、解雇にあたって使用者は、実際に解雇に相当する行為について、具体的事実を疎明できなければなりません(日本メカニカル事件 東京地裁 昭和56.12.23)。

しかし、業務に差し支えが生じていて、どうしても解雇しなければならない、というケースがあるのも事実です。
解雇理由の明示
労働基準法(第22条第2項)の改正により、労働者は、解雇の予告をされた日から退職の日までの間においても、解雇の理由についての証明書を請求できることになりました。

ただし、使用者は、解雇の予告がされた日以後に労働者がその解雇以外の事由によって退職した場合は、この証明書を交付する義務はないとされています。

・協調性欠如自体で懲戒責任を問うのは難しい

・協調性の欠如自体が、解雇の主たる理由であるケースはほとんどありません。

・解雇は、勤務成績(態度)不良、従業員としての不適格を理由とする普通解雇がほとんどです。

・協調性欠如自体は企業秩序違反行為とはいえないので、懲戒責任を問えないからです。

・勤務成績不良が解雇の主要な理由で、従業員として不適格であるという判断も勤務成績不良がその根拠に なっています。

・勤務成績不良は、協調性の欠如以外に本人の能力不足などに由来する部分も大きくなっています。

「笑顔ない」理由に解雇は無効 札幌の病院に慰謝料

札幌市中央区の「医療法人恵和会宮の森病院」の契約職員として勤務していた札幌市の女性(27)が「笑顔がない」など不当な理由で雇用契約の更新を拒否されたとして、慰謝料の支払いなどを求めた訴訟の判決が10日、札幌地裁であった。
小川雅敏裁判官は「主観的で、解雇の理由として著しく合理性、相当性を欠く」と述べ、更新拒否を無効とし、慰謝料20万円と更新拒否後の賃金の支払いなどを病院側に命じた。

女性は98年から、入院患者の身の回り世話する介護員として、1年の雇用契約の更新を続け4年3ヶ月間働いていた。ところが、02年6月、病院側から「笑顔がない」「不満そうなオーラが出ている」などを理由に、契約の更新を拒否された。

判決は、女性が契約更新を重ね、同病院の4割以上を占める介護員がいずれも契約職員であることなどから、「実質的に期間の定めのない労働契約と異ならない」と判断。病院側が更新を拒否した理由について「女性にとっては過酷で、著しく合理性を欠く。更新拒否は権利の濫用(らんよう)で無効」と結論づけた。
原告代理人の三浦桂子弁護士は「同種の訴訟の解雇の中でも、あまりにもひどくずさんな理由。病院側は判決を重く受け止めて猛省すべきだ」としている。

上司の命令をきかない

協調性の欠如は、単なる協調性の欠如のレベルだけではなく、反抗的態度もしくは業務命令違反に結びつくことになります。
上司や先輩の適切な教育や指導に対してことさら反抗的な態度をとることは、従業員としての適性について不利益な評価がなされます。
しかし、この段階で解雇をする例は稀です。
従業員としての適性に問題があると評価され、まずは、業務命令違反として懲戒処分の対象となります。
解雇の前に、一定の教育的な指導が要請されることになります。
ただ、専門職や管理職として採用された場合には、その職務適性に関して厳しい評価がなされています。

営業などの対人折衝の仕事

営業などの職務の場合には、取引先や顧客のニーズに応じた対人能力が要請されることになります。
こうした職務においては、対人折衝能力は労務提供上必要不可欠であると考えられます。
医療・看護や児童を対象とする教育についても、同様に考えてよいでしょう。

管理職

部下の管理を適切に行い、業務を適格に遂行するためには、説明、説得能力や指導能力が問われることになります。
この場合、対応能力というよりは能動的、積極的な働きかけが要請され、リーダーシップの欠如、対人折衝能力の欠如、共同作業能力の欠如などが問題となります。
職務遂行上共同作業が不可欠な仕事
特に専門職(看護婦など)については、同僚との十分なコミュニケーションが必要です。
自己の専門能力が必要であるとともに、自分の見解のみに固執せずチームプレーをこなす能力が求められます。
こうした人間関係レベルでの職場のトラブルも職場秩序に悪影響を及ぼしますが、それが職務遂行上の問題にまでならなければ解雇の理由にはなりません。

非正規従業員

パートタイマーであっても、問題のある業務遂行について上司が注意し、教育するも向上が見受けられない、といった客観的状況があれば、解雇は成立します。
逆に、要求する能力水準が低くていい場合に、単なる業務遂行能力不足で解雇すると、解雇権濫用とされる可能性があります。
日本電子計算事件 東京地裁 昭和63.11.30

パートの雇止めの事案

裁判所は、契約関係の継続を期待することに合理性が認められるので、解雇に関する法理が類推されるとしながらも、従業員が特定業務以外の仕事に対する意欲を示さず、協調性がないため共同作業ができず、他の職種への切り替えも拒否しているうえに、再三の注意にかかわらずアルバイト勤務表への虚偽記入をするという不正行為を繰り返えすなどの事実から、雇止めが濫用にわたるものではないとした。

教育的指導が必要

協調性が欠如しているとされる場合でも、一定の教育的指導を要するとすることが多くなっています。
もともと企業には、こうしたトラブルにより業務遂行上支障が生ずる程の紛争にならないよう配慮、処理することが労務管理上要請していると考えられます。
配転などを行っても勤務態度に変化が見られず、成績が改善されなかったり、やる気を失っている場合には、勤務の姿勢に問題があり矯正が困難だとして解雇が有効とされます。

逆に、トラブルの主な原因が会社にある場合、勤務不良に対して会社の指導が十分でないなどの場合は、解雇は無効とされています。
また、単に会社の気に入らない行為がある場合や権利行使に熱心な場合に、解雇が無効となるのは当然です。
使用者が解雇回避のために努力しているかがポイント

以上のように、解雇権の濫用か否かの判断には、使用者が解雇を回避するためにどのような方策をとったかが、問われます。
配置転換などによって解雇を回避することができる場合は、このような手段をとる必要があり、何もせずに解雇した場合は、解雇権の濫用で、解雇無効とされることがあります。
職場規模により判断に差が出る
小規模企業では、配転先を見つけるのも困難です。 解雇を有効とする事案では、小規模職場であるが故に協調性が特に重要であるということがポイントになっています。

 

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